調査シリーズ No.65
今後の企業経営と賃金のあり方に関する調査

平成22年3月30日

概要

研究の目的と方法

  • この調査では、厳しく急速に変化する経営環境の中で、企業は雇用のあり方をどのように考え、実際にどのように賃金体系や賃金制度の運用を変えてきたのか、そのことにより職場にどのような影響が及んでいるかといった雇用システムと職場の現状を把握することを目的としている。特に、報酬管理(賃金の構成要素や賃金体系、従業員への評価を含む賃金制度の運用がどのように行われているか)に焦点をあて、実態を明らかにしている。
  • 産業別、規模別に無作為抽出された全国の従業員50人以上の企業15,000社を対象に郵送法によりアンケート調査を実施。(ただし、日本標準産業分類の全産業から、農林漁業、鉱業は対象から除いた)。
  • 有効回収数2,734社(有効回収率18.2%)

主な事実発見

賃金体系については、「職能重視型」とする割合が「現状」(27.7%)と「今後」(33.2%)、ともに最も高い。また、「現状」と「今後」の差をみると、「今後」の方が高くなっているのは「職責・役割重視型」(8.3ポイント増)、「職能重視型」(5.5ポイント増)、「長期貢献重視型」(4.3ポイント増)など。逆に、「今後」の方が低くなっているのは「個人属性重視型」(14.0ポイント減)、「職務重視型」(4.4ポイント減)である。なお、成果主義賃金の典型といえる「短期成果重視型」については、「現状」(8.5%)と「今後」(8.6%)ともに、1割に満たず、今後の賃金体系に関する方向性としては、「職能」「職責・役割」などをより重視する傾向があることが明らかになった。(図表1

図表1 賃金体系(N=2,734、単位=%)

図表1 賃金体系(N=2,734、単位=%)/調査シリーズNo.65画像01

(参考) 賃金体系に関する用語について

1.個人属性重視型(年齢・勤続・学歴等個人の属性を重視)、2.職能重視型(本人の持つ職務遂行能力を重視)、3.職務重視型(主に従事する職務・仕事の内容を重視)、4.職責・役割重視型(ある職位に期待される複数の職務群の遂行状況を重視)、5.短期成果重視型(1年以内程度の個人の短期間の仕事の成果・業績を重視)、6.長期貢献重視型(1年を超える長期間の会社に対する貢献の蓄積を重視)

賃金制度のあり方では、「今まで」および「今後」とも「従業員の個々の職務遂行能力を評価し、賃金に反映させること」、「従業員個々の成果を把握し、賃金に反映させること」を運用や見直しの際に重視すると回答した割合が高かった。また、今後の方向性としては、「組織・チームの成果を賃金に反映させること」を重視する傾向があることが明らかになった。(図表2

図表2 賃金制度のあり方をめぐって重視すること(N=2,734、3つ以内の複数回答、単位=%)

図表2 賃金制度のあり方をめぐって重視すること(N=2,734、3つ以内の複数回答、単位=%)/調査シリーズNo.65画像02

お詫びと訂正(2022年10月25日)

図表2に誤りがありましたので、正しい図表に差し替えました。訂正してお詫びいたします。

また、賃金制度の運用を見直す際には、今後の方向性として「評価(人事考課)による昇進・昇格の厳格化」、「評価による昇給(査定昇給)の導入」や「評価(人事考課)による降格・降級の実施」などを考えている企業が多いことが明らかとなった。(図表3

図表3 賃金制度の見直し項目(N=2,734、複数回答)

図表3 賃金制度の見直し項目(N=2,734、複数回答)/調査シリーズNo.65画像02

注)回答が20%以上の項目について挙げた。

政策的含意・提言

本調査結果では、 (1)経営環境の変化と企業の現状、 (2)雇用に関する考え方、 (3)賃金制度の動向、 (4)労使コミュニケーションの概況など経営環境と雇用システムの現状が明らかとなっている。長期雇用を前提としつつ、自社のおかれた環境のなかで、どのような賃金体系や賃金制度、評価制度をとっているのかといった現状や今後の改革の方向性について明らかにした本調査結果は、「労働経済白書」においてデータとして多数引用されており、特に「雇用安定機能と人材育成機能を備えた雇用システムの意義と今後の展望」の基礎データに活用されている。

政策への貢献

厚生労働省が設置した雇用政策研究会の資料として活用された。

本文

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研究期間

平成21年度

執筆担当者

調査・解析部

データ・アーカイブ

本調査のデータが収録されています(アーカイブNo.26)。

お問合せ先

内容について
研究調整部 研究調整課 お問合せフォーム新しいウィンドウ
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