労働政策研究報告書 No.134
非三大都市圏へのU・Iターンの促進と
U・Iターン者を活用した内発的雇用創出活性化に係る研究
概要
研究の目的と方法
三大都市圏と非三大都市圏の経済格差は縮小する傾向になく、非三大都市圏からの人口流出も留まる気配がない。本報告書では、これら問題の解消に資するべく、非三大都市圏へのU・Iターン促進策と非三大都市圏におけるU・Iターン者を活用した内発的雇用創出活性化について検討した。これら課題を検討するにあたっては、個人と企業に対するアンケートを実施し、そこから得られたデータを利用して統計的分析を行った。
主な事実発見
- U・Iターンを希望する理由としては、「その県や地域が好きだから」、「のんびり生活したいから」、「親族・友人・知人が多いので」、「仕事以外の生活も充実させたいから」、「自然が豊かだから」などの回答割合が高い。
- U・Iターン促進のためには、仕事面と引っ越し面の問題を解消する必要があるが、前者に注目した分析からは、希望年収が低い者ほど仕事が決まりやすい(図表1)ことにくわえ、引っ越し理由として「住宅事情が良いので」、「親族・友人・知人が多いので」という理由を挙げていた者ほど希望年収が低いことがわかった。後者に注目した分析からは、Uターン者ほど引っ越しが容易であることや、引っ越し前の家が持ち家である者ほど引っ越しが困難になることがわかった。
- 非三大都市圏の企業が評価しているU・Iターン者としては、管理的職業に従事している者、30歳代の者、50歳代の者、専門学校卒の者を挙げることができる。また、非三大都市圏企業のうちいかなる企業がU・Iターン者を評価しているのかを検討すると、中途採用のU・Iターン者の割合が高い企業、経営方針として事業の重点化、規模拡大、製品・サービスの高付加価値化を目指している企業であることがわかった。(図表2)
- 非三大都市圏企業のうち、「今後、U・Iターン者以外よりもU・Iターン者の採用を希望する」と回答した企業の特徴は以下のとおり。既に採用しているU・Iターン者の能力のうち「地元県の人材とは異なったセンス」や「マネージメント能力」が役立っていると回答した企業、「都市圏から来たU・Iターン者」を多く採用している企業、それに「コア人材が不足している」企業。
政策的含意
- 上記1.を踏まえると、U・Iターン希望者を増やすためには、県・地域・自然の魅力やライフワークバランスの創造・周知などが重要。
- 上記2.を踏まえると、仕事決定確率を高めるためには希望年収を低めに誘導することが重要であり、そのためには、良好な住環境の整備・周知や三大都市圏在住者に非三大都市圏在住の友人・知人を作らせることが重要。また、引っ越し実現確率を高めるためには、引っ越し先についてのきめ細やかで多様な情報を提供することや、持ち家の売買の円滑化が重要。なお、得られた結果を総合的に判断すると、U・Iターンを促進するためには、三大都市圏-非三大都市圏間の交流も有効となる可能性がある。
- 上記3.と4.を踏まえると、そこで示された属性を持った者のU・Iターンを促進したり、そこで示された属性を持った企業にU・Iターン者をマッチングすることにより内発的雇用創出を活性化できる可能性がある。
政策への貢献
全国レベルのアンケートを実施することによりデータを作成、それを利用して統計的な手法を用いながら一定の具体性を持った政策的インプリケーションを導出した。
本文
- 労働政策研究報告書 No.134 サマリー (PDF:436KB)
- 労働政策研究報告書 No.134 本文 (PDF:1.0MB)
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研究期間
平成22年度
執筆担当者
- 大谷 剛
- 労働政策研究・研修機構 副主任研究員
- 井川静恵
- 帝塚山大学経済学部准教授