労働政策研究報告書No.119
市町村における地域雇用戦略と雇用創出の取組み
概要
研究の目的と方法
この研究は、プロジェクト研究「雇用・失業の地域構造の変革要因に関する研究」のサブテーマの1つで、市町村における雇用創出への取組みの状況と効果や課題について自治体を対象にアンケート調査を実施し、そのデータの分析結果を取りまとめたものである。
本報告書では市町村長を対象に実施したアンケート調査結果、市町村の雇用問題担当者を対象に実施したアンケート調査結果、これらから作成したマッチングデータを用いて、地域振興と地域雇用創出についてどのようなビジョンを持っているのか、ビジョンを具体化するための地域雇用戦略、雇用創出における国と地方自治体がはたす役割について検討した。
主な事実発見
市町村の雇用戦略を3つに類型化し、個別の雇用創出策のうち、企業誘致策の効果について、立地企業に対する優遇措置の有無による誘致企業数に及ぼす効果、地域雇用創出策としての構造改革特区制度の雇用創出効果を検討した点、さらに、地域提案型雇用創造促進事業(パッケージ事業)および地域雇用創造推進事業(新パッケージ事業)について取り上げ検討した。
自治体における雇用創出策は企業誘致が中心であるが、製造業集積が進んでいる自治体や「企業訪問」など積極的な働きかけをした自治体の方が誘致企業数に有意差があった。しかし、「助成金・補助金、奨励金」など立地企業に対する優遇措置の有無による誘致企業数の差は確認できなかった。
また、地域雇用創出策として構造改革特区制度を評価した場合、特区制度への参加構造は雇用効果に結びつきにくい。
さらに、パッケージ事業に申請・認定された自治体は、雇用創出が最重要課題、内発・外発両方重視、卸売・小売業、飲食店・宿泊業、医療、福祉、情報通信等の分野での雇用創出を市町村中心で取り組むところが多く、地域資源を活かした雇用創出をめざすことから事業趣旨とも整合的である。さらに、パッケージ業に採択された自治体では雇用戦略がより具体化されている。
図表1 市町村の雇用戦略の類型
図表2 市町村による雇用創出策の内容(複数回答)
政策的含意・提言
市町村の雇用戦略の類型と実際に実施された雇用創出策との間に齟齬が生じているので、両者の整合的な取組みが必要である。
また、地域雇用創出策として構造改革特区制度は財政措置を伴った雇用創出策を補完的に用いることが求められる。
さらに、パッケージ業に採択された自治体では雇用戦略がより具体化されており、特に外部人材を活用した自治体ではパッケージ事業に対して高い主観的評価を与えていることから、地域雇用創出への取組みのモデルとなると思われる。
本文
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- 表紙・まえがき・執筆担当者・目次(PDF:619KB)
- 第1章 総論/
第2章 調査回答自治体の概略(PDF:989KB) - 第3章 市町村における地域雇用戦略のビジョンとその類型/
第4章 市町村における雇用創出への取組み態勢(PDF:984KB) - 第5章 市町村が実施した雇用創出策/
第6章 企業誘致による雇用創出(PDF:1.5MB) - 第7章 雇用対策としての構造改革特区―参加と成果の考察/
第8章 地域再生計画とパッケージ事業の雇用創出効果の分析(PDF:948KB) - 第9章 市町村における雇用創出の課題/
参考文献一覧(PDF:830KB)
研究期間
平成21年度
執筆担当者
- 勇上和史
- 神戸大学大学院経済学研究科 准教授
- 渡邊博顕
- 労働政策研究・研修機構 労働経済分析研究担当 副統括研究員
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