労働政策研究報告書No.113
介護分野における労働者の確保等に関する研究
概要
労働政策研究・研修機構では、厚生労働省からの要請を受け、介護労働者の確保・定着のために有効な雇用管理改善措置について、賃金等の労働条件対策等や人事マネジメントも含め、(財)介護労働安定センター「平成19年度介護労働実態調査」等の事業所調査、労働者調査の個票データ等を中心とする統計データ分析をもとに幅広い検証を行いました。この結果、下記のような知見が明らかになりました。
- 1.介護労働者の雇用確保・定着には、「介護労働の特性(職務の特性と従業者自身の特性)」を総合的に考慮し、対策をとることが必要。
特に従業者特性については、雇用形態、職種、年齢、性別、生計維持者か否か等の問題、就業意識等の多様性を考慮する必要がある。介護サービスの種類によっても、経営上の問題点、介護労働者の不満・不安に特徴がある。
- 2.雇用管理の適切な見直し・充実は、介護労働者の確保・定着につながる。
雇用管理の適切な見直し・充実は、満足度や意欲、働きやすさ、職業能力の向上や、不満・不安、孤独感、役割不明瞭感の解消、ストレスの軽減――に資する。
具体的には、教育訓練、職場内の情報共有・職員間コミュニケーションの円滑化、健康も含めた職場環境の整備等を図る施策(コミュニティ型対策)が有効である。そのほか、介護労働者の適切な評価・処遇・人員配置を行い、介護業務、介護従事者の多様性に応じたキャリア、処遇を整備することも有効である。
ストレスの軽減には雇用管理・メンタルケアの取り組みも有効。在宅系介護では、特に介護職の役割の明確化、施設系介護ではマネジメントの工夫が必要である。
- 3.賃金・労働時間等の労働条件の改善も介護労働者の確保・定着に有効。
- 4.マネジメントや管理職のあり方は、「人材の質」「働きやすさ」の向上の点でも重要。
「人材の質」を高める上では、(1)情報共有の仕組みを整える「構造づくり」 (2)上司や先輩が個々の介護職の能力開発に取り組む「個人配慮」のマネジメント手法 (3)そのマネジメントを実践する管理職を組織的に明確な基準・ビジョンを持って確保・登用・育成すること――が特に重要。
「働きやすさ」を向上させる上では、(1)組織的な体制整備 (2)上司・先輩による個別の相談・指導――が重要である。
- 5.雇用管理面における改善は、人材の確保・定着のみならず、サービスの質の向上、事業経営の改善にも貢献する。
本文
- 労働政策研究報告書No.113 サマリー(PDF:468KB)
-
労働政策研究報告書No.113 本文はこちら(PDF:6.7MB)
全文ダウンロードに時間が掛かる場合は分割版をご利用ください。
- 表紙・まえがき・執筆担当者・目次(PDF:589KB)
- 序章 調査研究の概要と本研究の含意(PDF:1.4MB)
- 第1章 介護労働者の確保・定着に向けて―平成19年度介護労働実態調査データが示す課題と方向性―(PDF:825KB)
- 第2章 介護人材の質を高めるための望ましいマネジメントのあり方とは―平成19年度介護施設雇用管理実態調査分析結果から―(PDF:469KB)
- 第3章 施設系事業所における介護職のストレス軽減と雇用管理(PDF:609KB)
- 第4章 介護事業所における雇用管理改善措置の効果分析(PDF:1.2MB)
- 第5章 介護労働者の離職:他職種との賃金格差が離職に与える影響(PDF:622KB)
- 第5章:資料 介護事業所単位の収支と離職率の関係(PDF:363KB)
- 補論 介護職員不足問題の経済分析(PDF:667KB)
研究期間
平成20年度
執筆担当者
- 藤井 宏一
- 労働政策研究・研修機構 雇用戦略部門統括研究員
- 西川 真規子
- 法政大学経営学部・同大学院経営学研究科 教授
- 堀田 聰子
- 東京大学社会科学研究所 特任准教
- 鈴木 俊光
- 労働政策研究・研修機構 雇用戦略部門臨時研究協力員
- 花岡 智恵
- 国立長寿医療センター 流動研究員
- 周 燕飛
- 労働政策研究・研修機構 雇用戦略部門研究員