労働政策研究報告書No.113
介護分野における労働者の確保等に関する研究

平成21年7月29日

概要

労働政策研究・研修機構では、厚生労働省からの要請を受け、介護労働者の確保・定着のために有効な雇用管理改善措置について、賃金等の労働条件対策等や人事マネジメントも含め、(財)介護労働安定センター「平成19年度介護労働実態調査」等の事業所調査、労働者調査の個票データ等を中心とする統計データ分析をもとに幅広い検証を行いました。この結果、下記のような知見が明らかになりました。

  1. 1.介護労働者の雇用確保・定着には、「介護労働の特性(職務の特性と従業者自身の特性)」を総合的に考慮し、対策をとることが必要。

    特に従業者特性については、雇用形態、職種、年齢、性別、生計維持者か否か等の問題、就業意識等の多様性を考慮する必要がある。介護サービスの種類によっても、経営上の問題点、介護労働者の不満・不安に特徴がある。

  2. 2.雇用管理の適切な見直し・充実は、介護労働者の確保・定着につながる。

    雇用管理の適切な見直し・充実は、満足度や意欲、働きやすさ、職業能力の向上や、不満・不安、孤独感、役割不明瞭感の解消、ストレスの軽減――に資する。

    具体的には、教育訓練、職場内の情報共有・職員間コミュニケーションの円滑化、健康も含めた職場環境の整備等を図る施策(コミュニティ型対策)が有効である。そのほか、介護労働者の適切な評価・処遇・人員配置を行い、介護業務、介護従事者の多様性に応じたキャリア、処遇を整備することも有効である。

    ストレスの軽減には雇用管理・メンタルケアの取り組みも有効。在宅系介護では、特に介護職の役割の明確化、施設系介護ではマネジメントの工夫が必要である。

  3. 3.賃金・労働時間等の労働条件の改善も介護労働者の確保・定着に有効。
  4. 4.マネジメントや管理職のあり方は、「人材の質」「働きやすさ」の向上の点でも重要。

    「人材の質」を高める上では、(1)情報共有の仕組みを整える「構造づくり」 (2)上司や先輩が個々の介護職の能力開発に取り組む「個人配慮」のマネジメント手法 (3)そのマネジメントを実践する管理職を組織的に明確な基準・ビジョンを持って確保・登用・育成すること――が特に重要。

    「働きやすさ」を向上させる上では、(1)組織的な体制整備 (2)上司・先輩による個別の相談・指導――が重要である。

  5. 5.雇用管理面における改善は、人材の確保・定着のみならず、サービスの質の向上、事業経営の改善にも貢献する。

本文

研究期間

平成20年度

執筆担当者

藤井 宏一
労働政策研究・研修機構 雇用戦略部門統括研究員
西川 真規子
法政大学経営学部・同大学院経営学研究科 教授
堀田 聰子
東京大学社会科学研究所 特任准教
鈴木 俊光
労働政策研究・研修機構 雇用戦略部門臨時研究協力員
花岡 智恵
国立長寿医療センター 流動研究員
周 燕飛
労働政策研究・研修機構 雇用戦略部門研究員

入手方法等

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