ディスカッションペーパー 19-01
人々は、いつ、どこで仕事をする時にスマートフォンやパソコンなどを使用するのか
―「社会生活基本調査」個票データによる観察―
概要
研究の目的
「人々はいつ、どこで仕事をし、またその仕事においてスマートフォンやパソコンなどを使用しているのか」、その実態を明らかにすること。
研究の方法
総務省「平成28年(2016)年社会生活基本調査」の調査票Bの個票データを個人属性(年齢、性別、配偶関係、ふだん就業状態)、時間帯、行動を執った場所(自宅か自宅以外か)、スマートフォンやパソコンなどの使用の有無、行動種類の別に集計する。
主な観察結果
- 性別、年齢、配偶関係、ふだんの就業状態によって、つまりライフステージ、ライフスタイルの違いによって、副業、スマートフォンやパソコンなどを使用した仕事のパターンが異なる。
- 年齢が高くなるほど、とりわけ60歳以上の個人について、平日の副業の行動者率が相対的に高い。(「行動者率」とは、人口に占める当該行動(ここでは副業)を執る個人の割合)また、主な仕事の行動者率が低くなる早朝および夜間に副業の行動者率が必ずしも高くなるわけではない。
- 土日の副業の特徴は、60歳以上の年齢階級と比べ、それ未満の副業の行動者率が相対的に高い、もしくは同水準であることである。ただし、早朝や夜間に副業の行動者率が必ずしも高くないことは、平日と同様である。
- 副業を含む仕事の行動者率が高くなる平日の9時~12時および13時~17時に概して自宅外でスマートフォン・パソコンを使用して仕事をする行動者率が高くなる(図表1)。とりわけ、30~44歳でふだん主に仕事をしている女性(無配偶)、ふだん主に仕事をしている45~59歳の男性および女性(有配偶)で行動者率が相対的に高くなっている。
- ふだん主に仕事をしている45~59歳の女性(無配偶)および60歳以上の男性(有配偶)では、平日に自宅でスマートフォン・パソコンを使用して仕事をする者が確認されるが、その行動者率は高くない。
- 副業を含む仕事の行動者率が平日よりも低くなる土日では、自宅外でスマートフォン・パソコンを使用して仕事をする行動者率も相対的に低い。ただし、自宅外でスマートフォン・パソコンを使用して仕事をする行動者率が高くなる時間帯は、平日と同様である。自宅外でスマートフォン・パソコンを使用して仕事をする行動者率が相対的に高いのは、15~29歳でふだん主に仕事をしている女性、ふだん主に仕事をしている30~44歳の男性および女性(無配偶)である。
- 土日に自宅でスマートフォン・パソコンを使用して仕事をする行動者率は、平日と比べ相対的に高い(図表2)。とくに、ふだん主に仕事をしている60歳以上および15~29歳の男性で行動者率が高い。
政策的インプリケーション
本研究における観察ではスマートフォンやパソコンなどの使用が就業場所や労働時間の制約を大幅に緩和する状況は確認されなかったが、仮に情報通信機器によってこれらの制約を緩和できれば、人々のライフステージやライフスタイルに即したより快適な働き方が実現する可能性がある。
政策への貢献
人々のライフステージやライフスタイルに即したより快適な働き方を模索するための基礎資料となることが期待される。
本文
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- 表紙・目次・はじめに
1. 集計方法
2. データ (PDF:531KB) - 3. 集計結果(PDF:50.0MB)
- 4. 「副業」の行動者率
5. いつ、どこで仕事をする時にスマートフォンやパソコンなどを使用しているのか
おわりに(PDF:902KB) - 付表: 土曜日および日曜日の行動について集計した図表(PDF:40.4MB)
研究の区分
プロジェクト研究「技術革新等に伴う雇用・労働の今後のあり方に関する研究」
サブテーマ「技術革新、生産性と今後の労働市場のあり方に関する研究」
研究期間
平成30年度
研究担当者
- 中野 諭
- 労働政策研究・研修機構 副主任研究員
お問合せ先
- 内容について
- 研究調整部 研究調整課 お問合せフォーム
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