ディスカッションペーパー 16-04
女性の労働参加の進展がマクロ経済に与える影響
―マクロ経済モデルによる試算―

平成28年7月13日

概要

研究の目的

女性の労働参加がマクロ経済に影響を与える経路を考えた場合、先行研究では経済の供給側に焦点を当て、労働投入の増加によって潜在GDPが増加すると主張している。これに対し、本研究では、経済の需要側も考慮し、労働投入の増加に伴う賃金・所得の変化とこれによる消費への影響を踏まえてもなおGDPは増加しうるのかを確認する。

研究の方法

労働力需給に関するマクロ計量経済モデルを構築し、以下の3つのシナリオを想定して女性の労働参加が進む場合と進まない場合のシミュレーションを行う。なお、本研究は、独立行政法人 経済産業研究所との共同研究の一環で実施された。

(a)労働参加現状ケース

2014年の性・年齢階級別労働力率のまま将来一定で推移する。

(b)労働参加進展(外生)ケース

各種雇用政策が適切に講じられて女性の労働市場参加が進む。女性の労働力率が、労働政策研究・研修機構(2016)の経済再生・労働参加進展シナリオの推計値まで上昇する。なお、推計値が公表されていない中間年は、直線補間で推計する。男性の労働力率は2014年のまま将来一定で推移する。

(c)労働参加進展(内生)ケース

各種雇用政策が適切に講じられて女性の労働市場参加が進む。女性の労働力率関数の説明変数の将来値が、労働政策研究・研修機構(2016)の経済再生・労働参加進展シナリオの場合と同様と想定する。男性の労働力率は2014年のまま将来一定で推移する。

主な推計結果

女性の労働参加が進むケースでは、女性の労働参加が現状(2014年)のまま進まないケースと比較し、将来、消費やGDPが増加することが確認された。

図表 実質GDP及び実質民間消費支出の推移

図表画像

注)2014年実績値は内閣府「国民経済計算」の実績値(2005年暦年基準)、2030年は推計値。

政策的インプリケーション

中長期的な労働行政を立案する、あるいは政府の推進する「女性活用」や「一億総活躍」の具体的な政策を検討する際の基礎情報となることが期待される。

本文

研究の区分

プロジェクト研究「我が国を取り巻く経済・社会環境の変化に応じた雇用・労働のあり方についての調査研究」
サブテーマ「労働力需給構造の変化と雇用・労働プロジェクト」

研究期間

平成27年度

執筆担当者

中野 諭
労働政策研究・研修機構 副主任研究員

お問合せ先

内容について
研究調整部 研究調整課 お問合せフォーム新しいウィンドウ

※本論文は、執筆者個人の責任で発表するものであり、労働政策研究・研修機構としての見解を示すものではありません。

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