ディスカッションペーパー 11-03
VRTカードの開発と活用の可能性の検討

平成23年4月28日

概要

研究の目的と方法

本研究では、カードを分類することで個人の職業興味や職務遂行の自信度を調べることができるガイダンス・ツール「VRTカード」を開発し、 (1)尺度としての信頼性、 (2)個別相談場面での活用の可能性を検討した。「VRTカード」は若年者を中心として、職業意識の発達を調べるために活用されてきた心理検査、「職業レディネス・テスト」を簡易に実施できるように開発された。そこで、 (1)に関しては、大学生を対象としてデータを集め、「VRTカード」が「職業レディネス・テスト」と同一の尺度構造を持っているかを検証した。また、カードとテストの両方を同じ人に実施した場合の回答の一致率を検討した。 (2)については、カードの試行実験場面において受検者から感想や意見を聞いたり、ハローワークの個別相談場面でのカード実施後に行った受検者のアンケートへの回答を分析して検討した。

主な事実発見

  • 尺度としての信頼性の検証について:「VRTカード」は「職業レディネス・テスト」と同一の構造を持ち、尺度としての信頼性も保証されていることが確認された。大学生1496名のデータを用いて尺度としての構造を検討した結果では、「VRTカード」は「職業レディネス・テスト」とほぼ同じ因子構造をもつことが確認された。また、大学生530名に対して同じ人に「VRTカード」と「職業レディネス・テスト」の両方を実施し、各項目への回答や興味や自信の上位領域を方法間で比較したところ、回答について約7割程度の一致率が得られた(図表1)。以上の結果から、「VRTカード」は「職業レディネス・テスト」の簡易版として活用可能であることが確認された。
  • 個別相談場面での活用の有効性について:試行実験として行った個別実施の場面では、「VRTカード」の分類結果に基づいた実施者と受検者とのやりとりから、受検者の職業興味の背景にある価値観や個性の理解に役立つ情報が得られることがわかった。公共職業安定所の実際の相談場面での実施結果(32名の求職者を対象)からは、「VRTカード」の利用によって職業興味や自信がわかることは求職者にとっては自己理解を深めることに役立ち、相談担当者にとっては相談を進める上での有効な手がかりを得るために有効であることが示された。実施後のアンケートへの回答においても使いやすさ、結果のわかりやすさなどについて全般に肯定的な結果が得られた(図表2)。

図表1 個別項目への回答の一致率(%)

図表1 個別項目への回答の一致率(%)/ディスカッションペーパー11-03

※「VRTカード」の回答から「ペーパー版」の回答を減じた値別に集計(0の場合は2つへの回答が一致していることを示す)。大学生530名のうちの一致率。

図表2 個別相談利用後のアンケートへの回答結果(n=32)

図表2 個別相談利用後のアンケートへの回答結果(n=32)/ディスカッションペーパー11-03

政策への貢献

職業安定行政では、従来から職業相談において様々な心理検査やガイダンス・ツールを活用し、求職者の職業選択に役立ててきた。本研究で開発した「VRTカード」は、求職者の職業興味や職務遂行の自信度を紙筆検査よりも短時間で簡単に把握することを可能とする。また、テストを受けている圧迫感を与えず楽しく取り組める、やり方がわかりやすい、結果についての話し合いを通して受検者と実施者との相互理解が深まるなどの利点もある。さらに適用できる対象者の範囲も広がったことから、今後、求職者に対する就職支援の場において有効に活用できるツールであるといえよう。

本文

研究期間

平成22年度

執筆担当者

室山晴美
労働政策研究・研修機構 主任研究員

入手方法等

入手方法

非売品です

お問合せ先

内容について
研究調整部 研究調整課 お問合せフォーム新しいウィンドウ

※本論文は、執筆者個人の責任で発表するものであり、労働政策研究・研修機構としての見解を示すものではありません。


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