ディスカッションペーパー 11-01
新成長戦略による地域の雇用誘発シミュレーション

平成23年1月19日

概要

研究の目的と方法

  • 本研究の目的は、政府の新成長戦略(平成22年6月18日閣議決定)に基づき、同戦略の政策目標が達成された際に見込まれる地域(地域ブロックおよび都道府県)の雇用誘発量を計測することである。
  • 新成長戦略では、アジア経済も成長分野となっており、今後も国際貿易が盛んになることが予想される。本研究では、上記に加えた感度分析として、新興国であるBRICs諸国向けの輸出が2005年比10%増加した場合の雇用誘発効果も計測している。
  • 具体的には、経済産業省『地域間産業連関表』に対応した形式で雇用表および国部門別輸出入額の推計を行い、新成長戦略の成長分野別地域別新規需要を与えた産業連関モデルによるシミュレーション分析を行っている。

主な推計結果

  • 対2005年雇用者比で見た新成長戦略による地域別雇用誘発効果は、環境・エネルギー分野(製品代替調整)で近畿1.64%、中部1.60%、中国1.58%の順に高い。他の成長分野における同比率の上位3位は、医療・介護分野では、関東5.57%、東北5.46%、近畿5.42%、観光分野では、近畿1.68%、沖縄1.59%、関東1.20%と分野によって雇用誘発の地域配分は異なる。
  • 新興国の1つである中華人民共和国(香港を含む)向けの輸出が10%拡大すると、対2005年雇用者比では、中部(0.29%)、近畿(0.26%)および中国(0.25%)の3地域で雇用の伸び率が高い。ただし、相手国が変われば、それにともなって雇用誘発効果の大きな地域・部門も変化する。

政策的含意

  1. 新成長戦略を踏まえて地域別に推計された雇用誘発量は、地域において個々の労働政策を実施していくうえで目安となりうる目標値を提供する。
  2. 新興国との交易(本研究では輸出のみ対象)が促進された場合の地域・部門別雇用誘発量は、FTAやEPAなどの国際的な経済連携協定を検討する際の基礎情報を提供する。
  3. 現状の産業・人口構成を前提とした推計では、新成長戦略による雇用誘発効果は地域によって一様ではなく、相対的に小さくなる地域が存在するため、これらの地域には追加的な対策が必要である(図表参照)。

図表:新成長戦略における環境・エネルギー分野(製品代替調整)の都道府県別雇用誘発
(対2005年雇用者比、単位:%)

図表:新成長戦略における環境・エネルギー分野(製品代替調整)の都道府県別雇用誘発 (対2005年雇用者比、単位:%)/ディスカッションペーパー11-01

本文

研究期間

平成22年度

執筆担当者

中野 諭
労働政策研究・研修機構 研究員

入手方法等

入手方法

非売品です

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研究調整部 研究調整課 お問合せフォーム新しいウィンドウ

※本論文は、執筆者個人の責任で発表するものであり、労働政策研究・研修機構としての見解を示すものではありません。


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