ディスカッションペーパー 10-07
母子世帯の母親はなぜ正社員就業を希望しないのか

平成23年1月7日

概要

研究の目的と方法

本研究は、日本における母子世帯の母親の半数以上が正社員就業を希望していないという現状に注目し、その原因を分析した。具体的には、最新のアンケート調査の個票データを元に、母子世帯の母親の正社員希望の状況、正社員就業を希望しない母親の特徴を明らかにし、母親の正社員就業のニーズを阻む要因を実証的に探った。

主な事実発見

正社員就業を希望しない理由として、「資格・能力不足仮説」、「育児制約仮説」および「非勤労収入仮説」の3つの仮説を想定して分析した結果、そのいずれもの仮説が、一定の説明力を持っていることが分かった。また、正社員就業の希望を実現させるためには、学歴、初職の正社員経験および看護師、准看護師、調理師、介護福祉士、簿記といった専門資格の保有が重要であることが、分析の結果として判明した。

政策的含意

これから期待される母子世帯の母親への就業支援は、おおむね以下の三つが考えられる。

第一に、母子世帯の母親における「育児による制約」を緩和するための支援策が必要である。たとえば、親ともっと同居しやすいような仕組みづくり、ファミリーフレンドリーな企業に対する支援策の充実、家事・育児支援の拡大などが考えられる。

第二に、本稿の分析から、学校教育年数が、女性の正社員就業希望に影響するだけではなく、その希望が実際の就職に結びつくかどうかにも影響する重要な要因であることが分かった。中学校卒や高卒など低位学歴の多い母子世帯の母親の稼働能力を引上げるためには、専門学校や大学等での再教育を支援することが有効な手段となるかもしれない。

第三に、(准)看護師や介護福祉士等の正社員就業に有利に働く専門資格に絞って、その取得を奨励・支援すべきといえる。また、母子世帯の母親には、訓練費用だけではなく、訓練を受けている間の生活費や子供の保育問題もセットで解決するような政策を計画すべきである。

本文

研究期間

平成21年度

執筆担当者

周 燕飛
労働政策研究・研修機構 副主任研究員

入手方法等

入手方法

非売品です

お問合せ先

内容について
研究調整部 研究調整課 お問合せフォーム新しいウィンドウ

※本論文は、執筆者個人の責任で発表するものであり、労働政策研究・研修機構としての見解を示すものではありません。


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