低所得の非正規雇用が拡大
―過去10年の雇用構造分析の報告

カテゴリー:非正規雇用

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  • 国別労働トピック:2013年5月

新たにスタートした朴槿惠政権は、5年間で238万人の雇用を創出し、雇用率70%をめざしている。しかし、現代経済研究院が発表した報告書によると、過去10年間に増加した仕事は低所得の非正規雇用に集中しており、雇用安定など「雇用の質」が劣化しているという。

報告書のタイトルは、「最近10年間の雇用構造の変化と特徴」で、発表以来、注目を集めている。報告書によると、2011年の就業者数に占める賃金労働者の割合は71.8%でOECD平均の83.8%と比べて低い水準にとどまっている。賃金労働者は、2003年の1440万人から2012年には1771万人へと331万人増加した。賃金労働者が増えて先進国化する一方、自営業者は同期間に774万人から697万人へと77万人減少した(表1)。

高所得(中位所得の150%以上)の仕事の割合は、2003年の29.5%から2012年には25.7%に低下した。一方、低所得(中位所得の50%未満)の仕事の割合は、10.5%から14.0%へと上昇した(表2)。特に、高所得の正規雇用の割合は25.6%から22.7%に低下し、低所得の非正規雇用の割合は8.3%から11.1%へと拡大した。仕事数でみると、低所得の非正規雇用は117万人から198万人へと81万人も増加した(表3)。さらに、55歳以上の高齢者は、低所得の非正規雇用の職に就くことが多く、非正規雇用の高齢者の割合は、過去10年間で5.4%から8.8%へと上昇した(表4)。

仕事の数だけ見れば安定雇用が保障されているようにみえるが、低付加価値の仕事の増加、働く貧困層の登場などにより国内雇用の質はむしろ悪くなったと指摘されている。低所得の仕事で短時間労働(週36時間未満労働)の割合が、この期間に5.7%から9.9%へと拡大し、所得の減少、雇用の安定性の低下などの悪影響も懸念されている。

現代経済研究院は、低所得の非正規労働者は、相対的に低学歴、低技術、高齢者である可能性が高いため、むやみに仕事を創り出すのではなく、社会保障制度、失業手当、最低生計費の確保などの安全網の整備が必要であると提言している。

なお、統計庁によると、2013年2月の失業率は4.0%で前年同月比0.2%ポイント下落した。そのうち、青年層(15~29歳)の失業率は9.1%で前年同月比0.8%ポイント上昇した。失業者数は99万人で前年同月比5万3000人減少した。また、求職断念者は前年同月比1万1000人増加した。求職断念者は非労働力人口に分類されるため、公式の失業率統計には含まれない。2013年2月の就業者数は、前年同月比20万1000人に増加した。しかし、就業者数の伸びはここ最近継続して低下傾向にある(表5)。

表1:賃金労働者と自営業者の推移(単位:%、千人)
  2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012
賃金労者 14,402
(65.1)
14,894
(66.0)
15,185
(66.4)
15,551
(67.2)
15,970
(68.2)
16,206
(68.7)
16,454
(70.0)
16,971
(71.2)
17,397
(71.8)
17,712
(71.8)
自営業者 7,736
(34.9)
7,663
(34.0)
7,671
(33.6)
7,600
(32.8)
7,463
(31.8)
7,371
(31.3)
7,052
(30.0)
6,858
(28.8)
6,847
(28.2)
6,969
(28.2)
全体就業者 22,139 22,557 22,856 23,151 23,433 23,577 23,506 23,829 24,244 24,681
  • 出所:統計庁
  • 注:自営業者=雇用主+自営者+無給家族従事者、( )は全就業者に占める割合
表2:所得分類別雇用割合の変化の推移 (%)
  2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012
高所得 29.5 27.6 29.7 22.8 24.3 27.0 27.8 28.3 25.0 25.7
中所得 60.0 59.6 58.3 61.9 61.2 61.4 59.6 59.5 61.0 60.3
低所得 10.5 12.8 12.0 15.3 14.4 11.6 12.5 12.2 14.1 14.0
  • 出所:統計庁「経済活動人口調査付加調査のマイクロデータ」
  • 注:高所得は中位所得の150%以上、中所得は50%以上150%未満の場合、低所得は50%未満を意味する。
表3:雇用の安定性と所得水準に応じた仕事の数及び割合の推移 (単位:%、千個)
  2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012





3,623
(25.6)
3,280
(22.5)
3,689
(24.6)
2,978
(19.4)
3,215
(20.2)
3,775
(23.4)
4,086
(24.8)
4,303
(25.2)
3,863
(22.1)
4,034
(22.7)


5,599
(39.6)
5,482
(37.6)
5,394
(36.0)
6,312
(41.1)
6,368
(40.1)
6,440
(40.0)
6,221
(37.7)
6,674
(39.1)
7,142
(40.8)
7,291
(41.1)


321
(2.3)
428
(2.9)
403
(2.7)
605
(3.9)
597
(3.8)
444
(2.8)
419
(2.5)
386
(2.3)
510
(2.9)
498
(2.8)






549
(3.9)
738
(5.1)
761
(5.1)
522
(3.4)
649
(4.1)
574
(3.6)
502
(3.0)
527
(3.1)
507
(2.9)
528
(3.0)


2,886
(20.4)
3,211
(22.0)
3,330
(22.2)
3,196
(20.8)
3,359
(21.1)
3,445
(21.4)
3,604
(21.9)
3,463
(20.3)
3,536
(20.2)
3,407
(19.2)


1,171
(8.3)
1,445
(9.9)
1,392
(9.3)
1,739
(11.3)
1,694
(10.7)
1,426
(8.9)
1,648
(10.0)
1,695
(9.9)
1,952
(11.1)
1,976
(11.1)
全体 14,149 14,584 14,968 15,351 15,882 16,103 16,479 17,048 17,510 17,734
  • 出所:統計庁「経済活動人口調査、付加調査」のマイクロデータ(8月)を利用し、現代経済研究院が計算
  • 注:( )は雇用者数に占める各項目の仕事の割合を意味する。
表4:雇用形態及び年齢別雇用割合の推移(%)
  2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012



16-25 7.96 7.33 6.38 5.76 5.17 4.61 4.26 3.91 3.95 4.15
26-35 24.04 21.82 21.94 22.28 21.40 21.64 21.10 20.94 20.51 20.40
36-45 19.92 18.65 18.92 19.26 19.34 20.43 20.10 20.56 19.93 19.60
46-55 11.26 11.18 11.86 12.86 13.50 14.54 14.68 15.65 15.33 15.90
55以上 4.25 4.04 4.27 4.29 4.69 4.97 4.94 5.59 6.04 6.63




16-25 5.24 4.94 5.02 4.19 3.99 3.74 3.82 3.68 3.74 3.89
26-35 8.20 9.97 8.85 8.39 8.24 7.45 6.95 6.53 6.58 5.84
36-45 7.88 9.54 9.45 9.38 9.31 8.53 8.22 7.56 7.51 7.18
46-55 5.88 6.69 7.34 7.16 7.52 7.38 7.86 7.54 7.96 7.63
55以上 5.35 5.84 5.97 6.43 6.84 6.70 8.08 8.04 8.44 8.79
  • 出所:統計庁「経済活動人口調査マイクロデータ(8月)」
表5:就業者増減、失業者、失業率、青年失業率 (単位 : 万人 %)
  2007 2008 2009 2010 2011 2012 2012 2012 2012 2013 2013 2013
10 11 12 01 02 03
就業者増減 28.2 14.5 -7.2 32.3 41.5 43.7 39.6 35.3 27.7 32.2 20.1 24.9
農林漁業 -5.8 -3.7 -3.8 -8.2 -2.5 -1.4 -1.9 2.5 -1.2 -1.5 -1.5 0.5
製造業 -4.3 -5.2 -12.6 19.1 6.3 1.4 14.4 16.4 11.2 15.6 7.9 12.3
建設業 1.6 -3.7 -9.1 3.3 -0.2 2.2 -0.3 -3.5 -8.2 -4.8 -9.5 -5.1
サービス業 35.6 26.0 17.9 20.0 38.6 41.6 27.0 18.7 25.2 22.0 22.2 15.6
失業者 78.3 76.9 88.9 92.0 85.5 82.0 71.8 71.0 73.7 84.7 99.0 88.3
失業率(%) 3.2 3.2 3.6 3.7 3.4 3.2 2.8 2.8 2.9 3.4 4.0 3.5
青年失業者 32.8 31.5 34.7 34.0 32.0 31.3 27.6 27.1 30.4 31.1 37.1 34.6
青年失業率(%) 7.2 7.2 8.1 8.0 7.6 7.5 6.9 6.7 7.5 7.5 9.1 8.6
  • 出所:統計庁「経済活動人口調査」
  • *就業者の増減は、前年同期比
  • *青年失業者と青年失業率年齢目安:15~29歳

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