「非正規労働者」問題に対し是正の動き
―「違法派遣」判決や法令違反の特別監査
自動車大手のGM大宇(現在の韓国GM)が下請労働者を請負契約の形で生産ラインに従事させていたことについて、大法院は2月28日、「違法派遣」と認定した。一方、雇用労働部は1~2月に大規模な特別監査を実施し、流通大手のEマートの「違法派遣」を摘発した。その結果、同社は販売下請企業の労働者9100人を4月1日から正規社員に採用した。朴政権は、非正規労働者問題への対策を重要な政策課題の1つに掲げている。
大法院、GM大宇に対し「違法派遣」と認定
韓国では、製造業の直接生産工程への労働者派遣は禁止されている。GM大宇は2003年12月22日から1月26日までの間、生産ラインで下請企業6社の従業員843人を働かせた。これを違法派遣として、2006年12月に賠償金の支払いを命じられた。元CEOはこの命令を拒否し、裁判に訴えた。裁判所は第1審で、GM大宇と6社の契約を合法的な請負契約であると判断した。しかし、第2審で高等法院は労働者派遣に当たると判断し、元CEOに賠償金の支払いを命じ、元CEOはこれを不服として上告していた。
第3審の大法院は2月28日、GM大宇の指揮・監督に基づいて下請6社の従業員が働いていたとし、事実上の派遣労働者に当たると判断。契約は請負の形態をとっているが、労働実態は派遣契約だとして、違法と結論づけた。また、下請企業の経営者が法律に違反する行為であることを完全に認識していた、と大法院は判断した。同時に、たとえ法違反を認識しなかったとしても刑事責任は免れないとしている。大法院は、GM大宇の元CEOに対し700万ウォン、下請6社の経営者に対し300万ウォン~400万ウォンの賠償金の支払いを命じた。
大法院は2010年7月に、下請労働者を使った現代自動車に対し、同様の「違法派遣」の判決を下している。今回はそれに続く2例目となる。
Eマート、販売下請労働者9100人を正規社員に採用
雇用労働部は2月28日、流通大手のEマートに対し、1月17日から2月28日まで大規模な特別監査を実施し、数多くの労働関係法令違反を摘発したと発表した。雇用労働部は、Eマートの23店舗で商品の陳列を行っていた販売下請企業の労働者1978人を違法派遣労働者と認定し、直接雇用するか毎月197億8000万ウォンの罰金を支払うよう同社に命じた。Eマートは販売下請企業の労働者を直接指揮・監督しており、労働者派遣に該当すると判断された。韓国の労働法は、商品の陳列や顧客に直接対応する業務に従事する労働者を派遣労働者として雇い入れることを禁止している。Eマートは、これらの労働者を直接雇用した場合に必要となる各種手当の支払いを回避するため、違法な雇用形態を続けていた。
Eマートは4月1日、雇用労働部の特別監査結果を受け、同社の146店舗で働く販売下請企業の労働者9100人を4月1日から正社員に採用した。正規雇用された労働者は退職まで勤めることができ、医療ケア、教育支援などの様々な福祉手当や非正規労働者と比べて最大27%高い賃金が保障される。Eマートは、この雇用形態の変更により年間650億ウォンの追加費用が発生すると予想している。
さらに、Eマートは3月25日、ファッション部門で働く1821人の販売専門員を5月1日から正規雇用に転換すると発表した。彼らは、Eマートのファッション製品販売における顧客サービス改善、専門性強化のため、契約販売員(個人事業主)として雇用されている。
朴槿惠新政権は、非正規労働者に対する差別是正を重点政策課題の1つに掲げている。朴政権発足後、大手財閥企業のハンファグループが2043人の非正規労働者を正規雇用に転換すると発表した。韓国政府は、こうした動きがさらに広がることを期待している。
参考
- 韓国労働財団国際協力センターWeb情報
参考レート
- 100ウォン(KRW)=8.45円(※みずほ銀行ウェブサイト2013年3月29日現在)
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