依然大きい「期間制」と「正規」の賃金格差
―韓国労働研究院が発表
韓国労働研究院は2月5日、「期間制労働と正規労働の賃金格差の推移」と題する調査結果を発表した。それによると、雇用契約期間に定めのある期間制労働者の2012年の平均賃金(月額)は、正規労働者の62.8%の水準だった。時間制労働者と派遣などの非典型労働者を加えた非正規労働者全体では56.6%の水準にとどまる。なお、2012年8月時点の非正規労働者数は591万1000人で、全雇用労働者数1773万4000人の33.3%を占めている。
「期間制」の賃金水準は「正規」の63%
韓国の非正規労働者は、「時限的労働者」、「時間制労働者」、「非典型労働者」の3種類に分類される。時限的労働者はさらに、雇用契約期間に定めのある「期間制」、雇用契約期間に定めはないが更新の繰り返しによって雇用が継続される「繰返更新」、雇用期間の定めがなく非自発的理由で雇用の継続が見込めない「継続不能」の3つの形態に分けられる。「時間制労働者」は職場で同種業務に従事する通常労働者より所定労働時間の短い労働者であり、「非典型労働者」は派遣や下請などの労働者である。
2012年8月時点の期間制労働者数は271万4000人で非正規労働者全体(591万1000人)の約半数(45.9%)を占めていた(表1)。時間制労働者数は182万6000人(30.9%)、非典型労働者数は228万6000人(38.7%)であった。
期間制労働者の月平均賃金は154万5000ウォンで、非正規労働者全体の平均(139万3000ウォン)よりは高いが、正規労働者の平均(246万ウォン)と比べると91万5000ウォン低かった(表2)。
正規労働者の賃金を100とした場合、期間制労働者の賃金は62.8で、非正規労働者全体の賃金は56.6であった(表3)。非正規労働者の中には時間制労働者のように労働時間が短く賃金の低い労働者が相当数含まれる。
期間制労働者の週当たり平均労働時間は39.3時間でフルタイム(週40時間)に近かった(表4)。これは時間制労働者(21.0時間)より長く、正規労働者(44.2時間)よりも短い。労働時間の違いを調整した期間制労働者の賃金は、正規労働者の69.4の水準であった。調整前の月平均賃金比較の水準(62.8)より6.6ポイント高く、労働時間の違いによる賃金格差が大きいことを示している。
景気変動に敏感な「期間制」の賃金
韓国労働研究院よると、期間制労働者の賃金は景気変動に敏感な傾向を示している。期間制労働者の賃金は、2008年の148万9000ウォンから、2009年には17万8000ウォン減少し、131万1000ウォンとなった。リーマン・ショック後の景気低迷により期間制労働者の賃金が大きく変動したのが特徴である。
時限的労働者の賃金は2008年の145万8000ウォンから2009年には130万1000ウォンに減少した。非正規労働者全体の賃金も2008年の129万6000ウォンから2009年には120万2000ウォンに減少した。非正規労働者の賃金の減少は期間制労働者の賃金の減少に起因する。
正規労働者の賃金を100とした場合の期間制労働者の賃金水準は、2003年の64.5から2008年には70.0に上昇したが、リーマン・ショック後の2009年には59.6まで急激に低下した。その後は、 2010年59.3、2011年61.3と改善傾向を示しているが、格差は依然として大きい。
正規労働者と比べた期間制労働者の時給水準も2003年の70.7から2008年には75.1に上昇したが、2009年は65.5へと10ポイント近く低下した。 その後は、2010年65.8、2011年69.0と改善傾向を示している。
正規 労働者 |
非正規 労働者 |
時限的労働者 | 時間制 労働者 |
非典型 労働者 |
||||
期間制 | 繰返 更新 |
継続 不可 |
||||||
2003年8月 | 9,542 | 4,606 | 3,013 (65.4) |
2,403 (52.2) |
248 (5.4) |
362 (7.9) |
929 (20.2) |
1,678 (36.4) |
2004年8月 | 9,190 | 5,394 | 3,597 (66.7) |
2,491 (46.2) |
580 (10.8) |
526 (9.7) |
1,072 (19.9) |
1,948 (36.1) |
2005年8月 | 9,486 | 5,482 | 3,614 (65.9) |
2,728 (49.8) |
302 (5.5) |
585 (10.7) |
1,044 (19.0) |
1,907 (34.8) |
2006年8月 | 9,894 | 5,457 | 3,626 (66.5) |
2,722 (49.9) |
465 (8.5) |
439 (8.1) |
1,135 (20.8) |
1,933 (35.4) |
2007年8月 | 10,180 | 5,703 | 3,546 (62.2) |
2,531 (44.4) |
555 (9.7) |
460 (8.1) |
1,201 (21.1) |
2,208 (38.7) |
2008年8月 | 10,658 | 5,445 | 3,288 (60.4) |
2,365 (43.4) |
374 (6.9) |
549 (10.1) |
1,229 (22.6) |
2,137 (39.2) |
2009年8月 | 10,725 | 5,754 | 3,507 (60.9) |
2,815 (48.9) |
170 (3.0) |
521 (9.1) |
1,426 (24.8) |
2,283 (39.7) |
2010年8月 | 11,362 | 5,685 | 3,281 (57.7) |
2,494 (43.9) |
305 (5.4) |
481 (8.5) |
1,620 (28.5) |
2,289 (40.3) |
2011年8月 | 11,515 | 5,994 | 3,442 (57.4) |
2,668 (44.5) |
339 (5.7) |
436 (7.3) |
1,702 (28.4) |
2,427 (40.5) |
2012年8月 | 11,823 | 5,911 | 3,403 (57.6) |
2,714 (45.9) |
289 (4.9) |
400 (6.8) |
1,826 (30.9) |
2,286 (38.7) |
- 注:()内は非正規労働者に占める割合(%)である。
- 表で「繰返更新」は、雇用契約期間を定めないが、契約の反復更新により、雇用の継続が見込まれる者を意味する。「継続不可」は、非自発的な理由で雇用の継続が見込めない者を意味する。
- 出所:韓国労働研究院(2013)「期間制労働と正規労働の賃金格差の推移」
全体 | 正規 労働者 |
非正規 労働者 |
時限的労働者 | 時間制 労働者 |
非典型 労働者 |
||||
期間制 | 繰返 更新 |
継続 不可 |
|||||||
2003年8月 | 146.6 | 167.8 | 102.8 | 109.2 | 108.2 | 147.8 | 89.6 | 49.9 | 97.6 |
2004年8月 | 154.2 | 177.1 | 115.2 | 123.2 | 118.7 | 170.4 | 92.0 | 53.9 | 106.7 |
2005年8月 | 159.3 | 184.6 | 115.6 | 124.0 | 125.8 | 169.2 | 92.4 | 52.2 | 108.1 |
2006年8月 | 165.6 | 190.8 | 119.8 | 131.3 | 129.3 | 177.4 | 95.1 | 55.1 | 104.6 |
2007年8月 | 174.5 | 200.8 | 127.6 | 144.0 | 141.9 | 194.9 | 94.5 | 56.1 | 111.2 |
2008年8月 | 184.6 | 212.7 | 129.6 | 145.8 | 148.9 | 185.4 | 105.2 | 57.4 | 119.7 |
2009年8月 | 185.2 | 220.1 | 120.2 | 130.1 | 131.1 | 193.1 | 103.9 | 53.5 | 119.1 |
2010年8月 | 194.9 | 229.4 | 125.8 | 140.0 | 136.0 | 226.3 | 106.0 | 56.5 | 124.9 |
2011年8月 | 203.2 | 238.8 | 134.8 | 150.2 | 146.3 | 220.2 | 119.6 | 60.4 | 132.1 |
2012年8月 | 210.4 | 246.0 | 139.3 | 156.7 | 154.5 | 214.7 | 129.7 | 60.7 | 138.2 |
- 出所:韓国労働研究院(2013)「期間制労働と正規労働の賃金格差の推移」
正規 労働者 |
非正規 労働者 |
時限的労働者 | 時間制 労働者 |
非典型 労働者 |
||||
期間制 | 繰返 更新 |
継続 不可 |
||||||
2003年8月 | 100.0 | 61.3 | 65.1 | 64.5 | 88.1 | 53.4 | 29.8 | 58.2 |
2004年8月 | 100.0 | 65.0 | 69.5 | 67.0 | 96.2 | 51.9 | 30.4 | 60.3 |
2005年8月 | 100.0 | 62.7 | 67.2 | 68.2 | 91.7 | 50.1 | 28.3 | 58.5 |
2006年8月 | 100.0 | 62.8 | 68.8 | 67.7 | 93.0 | 49.8 | 28.9 | 54.8 |
2007年8月 | 100.0 | 63.5 | 71.7 | 70.6 | 97.0 | 47.0 | 27.9 | 55.4 |
2008年8月 | 100.0 | 60.9 | 68.5 | 70.0 | 87.1 | 49.5 | 27.0 | 56.3 |
2009年8月 | 100.0 | 54.6 | 59.1 | 59.6 | 87.7 | 47.2 | 24.3 | 54.1 |
2010年8月 | 100.0 | 54.8 | 61.0 | 59.3 | 98.6 | 46.2 | 24.6 | 54.4 |
2011年8月 | 100.0 | 56.4 | 62.9 | 61.3 | 92.2 | 50.1 | 25.3 | 55.3 |
2012年8月 | 100.0 | 56.6 | 63.7 | 62.8 | 87.3 | 52.7 | 24.7 | 56.2 |
- 出所:韓国労働研究院(2013)「期間制労働と正規労働の賃金格差の推移」
全体 | 正規 労働者 |
非正規 労働者 |
時限的労働者 | 時間制 労働者 |
非典型 労働者 |
||||
期間制 | 繰返 更新 |
継続 不可 |
|||||||
2003年8月 | 48.5 | 50.2 | 45.0 | 46.8 | 46.1 | 49.3 | 49.3 | 23.0 | 46.5 |
2004年8月 | 47.8 | 49.7 | 44.7 | 46.4 | 45.1 | 49.6 | 49.1 | 22.6 | 45.8 |
2005年8月 | 47.5 | 49.2 | 44.5 | 46.5 | 45.6 | 50.9 | 48.3 | 22.2 | 45.9 |
2006年8月 | 46.6 | 48.5 | 43.1 | 45.2 | 44.2 | 47.8 | 48.2 | 21.5 | 44.6 |
2007年8月 | 45.9 | 47.9 | 42.5 | 44.9 | 44.1 | 47.1 | 46.6 | 21.7 | 44.1 |
2008年8月 | 45.1 | 46.9 | 41.7 | 44.3 | 43.8 | 45.2 | 45.8 | 21.5 | 44.1 |
2009年8月 | 43.9 | 45.9 | 40.1 | 42.3 | 41.5 | 45.3 | 45.3 | 21.3 | 42.7 |
2010年8月 | 43.4 | 45.6 | 39.0 | 41.5 | 40.7 | 43.2 | 44.4 | 21.0 | 42.6 |
2011年8月 | 42.7 | 45.0 | 38.3 | 40.6 | 39.8 | 43.5 | 43.8 | 20.7 | 41.9 |
2012年8月 | 42.0 | 44.2 | 37.7 | 40.2 | 39.3 | 44.2 | 43.4 | 21.0 | 41.7 |
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