スペインにおける労働力需要の女性化

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年7月

1. 初めに

スペインにおける就業人口は、民主化以来大きく変化してきた。今日では女性の占める割合が増え、中年層に偏っており(労働市場への新規参入の年齢が高くなる一方、退職年齢はますます低くなっている)、労働力はより高い訓練を受けている。この傾向は2002年を通じて更に強まっている。2002年の雇用における成長率は1.6%と、前年までと比べて大きく低下しているが、これは経済成長の伸び悩みによるものであり、欧州平均と比べるとかなり高い。絶対数で見ると25万人以上の雇用が創出され、同年末の就業者数は1640万人であった。景気後退期の先触れとして、労働市場の雇用総出力は急速に低下しつつある。

2. 労働力需要の女性化

2002年に創出された雇用の4人に3人は女性で、就業者に占める女性の割合は3.3ポイント上昇し、37.9%と過去最高になっている。

しかしながら、女性の労働市場参入にとってきわめて好ましいこの状況は、例外といってよい。95年から02年まで、統計上では400万人近くの雇用が創出されているが、性別で見ると男性、女性の占める割合はほぼ拮抗している。しかし失業者に占める女性の割合は相変わらず男性を大幅に上回っており、雇用に際して女性の置かれている状況が男性よりも良くないことが明らかである。85年~91年の雇用創出局面で見ても、その終わり近くなって女性雇用が増加する傾向が見られ、その少し後に雇用破壊が始まっている。

女性雇用の動向は、労働市場のあらゆる分野で同様に進んできたわけではない。民主化移行の初期には、「家事手伝い」を除くと、女性が労働力全体に占める割合は経営者・賃金労働者ともに5分の1から4分の1程度であった。その後の25年間を経て、現在では公的部門において女性労働者の割合は倍増し、このまま増加し続ければ2010年までには男性と同数に達する勢いである。一方、民間賃金労働者、及び経営者に占める女性の割合の増加はより緩やかなものであった。

経営者全体に占める女性の割合は全体の4分の1強で、25年前と比べ5ポイント増えただけである。2002年における民間の労働者に占める女性の割合は全体の3分の1で、25年前の25%からかなり増えている。一方、女性経営者の数は3%減って70万人強となっている。

職場における女性のプレゼンスは、熟練度を問わずいわゆるホワイトカラー層に集中しており、肉体労働者、いわゆるブルーカラーの間ではごく少数にとどまっている。管理職に占める女性の割合は官民ともに3分の1程度で、全労働者に占める女性の割合をやや下回っている。管理職以外で、高い技能訓練度を要する部門では、女性の割合が平均をかなり上回っている。また、事務職やホテル・小売業等のより低い階層では、女性労働者が非常に多く、過去数十年間を通じて増加し続けている。

熟練肉体労働者に占める女性の割合はきわめて少なく、また減少傾向にある。工業及び建設業では、女性が雇用に占める割合は10%に満たない。一方、未熟練労働者のほとんどは女性で、しかもその割合は次第に増加している。

一般に考えられているのとは違い、労働者は年齢が高くなるほど職業上のより高い地位に達するのでなく、労働年齢の半ばで達する。民間企業における管理職や上級公務員のほぼ半数は35歳~49歳の年齢層に位置する(民間では40歳~45歳に集中)。この年齢を越えると、管理職の数は次第に下降する。25歳未満の企業管理職は2%で、65歳以上よりもやや多い。管理職及び上級公務員では、女性は男性よりもやや年齢が低くなっている。しかしながら、年齢別に女性労働者を見て行くと、女性は男性よりも昇進が遅く、また高い地位まで達する数も少ないことがわかる。

2002年における雇用創出はより高い年齢層に集中し、若年者では労働市場参入者の年齢低下傾向とは裏腹に雇用は伸びなかった。この点にも雇用創出の全般的傾向の変化が見られる。というのも、25歳未満の層での雇用破壊は96年以降見られず、90年代初頭の景気後退による影響が現れ始めた94年までさかのぼらなければならないからである。実際、現在の好況局面においては特に若年者の雇用成長が著しく、98年~2000年の3年間では平均を上回る伸びを示した。

一方、若年者の雇用における男女比は、2002年のみならず過去30年間を通じてほとんど変化していない。70年代以来、就業者全体に占める女性の割合がほぼ一貫して伸びてきているのに対し、25歳未満の層では全体の40%前後で安定している。ただし、これは女性の労働市場参入がより遅れたことに関係するものと思われる。

70年代~80年代にかけて、女性の割合が最も高いのはごく低い年齢層であったが、現在では25歳~29歳の層(42%)となっている。それ以上の年齢層では、出産・育児要因によって再び女性就業率と男性就業率の開きが大きくなる。

一方、定年退職年齢後における女性労働者の割合は80年代よりかなり低下しているが、これは補助的年金のおかげで高年齢の女性が働かなければならない状況を回避できるようになったからである。とはいえ、65歳以上では相変わらず女性就業者の割合が増える傾向にある。

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