MTUC、最低賃金900リンギを要求
マレーシア労働組合会議(MTUC)は5月1日のメーデー集会で、月額900リンギの最低賃金を法制化するよう政府に求めた。また、従業員積立基金(EPF)の2002年配当率が過去40年間で最低の4.25%になったことに抗議して、5月21日に全国でピケを展開すると宣言した。
MTUCのランパック委員長によると、多くの労働者が今なお月額500リンギ以下の低賃金に甘んじており、また退職の際におりるEPFの積立金もわずか8万リンギにすぎない。上昇し続ける生活費に照らしていずれも不当に低く、政府がこのまま何も対策を講じなければ、貧困撲滅の国家的プロジェクトは挫折し、逆に貧困層が増加することになりかねない。
こうした見方から同委員長は、政府がとるべき対策として月額900リンギの全国最低賃金を法制化することを求めた。
また、同委員長はEPFが4月に2002年の配当率を4.25%に決定したことに抗議するため、全国のEPF事務所の前でピケを張ることを宣言した(注1)。4.25%の配当率は過去40年間で最低で、高度成長を背景に配当率8%台を維持していた1980年-90年代半ばに較べて、ほぼ半分になったことになる。MTUCは、最低5%の配当率を保証するよう求めるとともに、使用者側のEPF拠出率を従業員月給の17.5%(現行12%)に、従業員側を13%(同11%)に、それぞれ引き上げることを提案している。
以上のほかにMTUCは政府に対し、1.女性に出産休暇90日、男性に育児休暇14日を付与すること、2.若年層の雇用機会を均等化すること、3.解雇者救済基金を設置すること、4.職場のセクシャルハラスメントに関する行為準則を定めること----などを要求した。
官公労連、MTUCにピケの再考を促す
これとは別に開催されたメーデー集会で官公労連Cuepacsは、MTUCに対して予定している全国ピケを見合わせるよう求めた。
Cuepacsのシバ委員長は、ピケを実施するMTUCの権利を基本的に尊重するとしながらも、新型肺炎SARSやイラク戦争などで国が難題に直面している時にピケを全国規模で展開するのは問題を増やすだけで適当ではないと、ピケの自粛を求めた。
さらに同委員長は、EPFの配当率について、シンガポールの中央積立基金(CPF)の配当率が2.5%であるなど他のアセアン諸国と較べればまだ高い方であると指摘する一方で(注2)、EPFの投資計画について海外投資が可能になるよう一部変更が必要であると、EPFにも問題があるとの認識も示した。
なお、Cuepacsが集会で政府に求めたのは、完全週休2日制の導入と年間13カ月分の給与支給の二項目であった。
注
- EPFは日本の厚生年金制度に相当するもので、1951年従業員積立基金法に基づき労使双方に掛金の拠出を義務づけている。拠出率は、従業員が月給の11%、使用者が同12%となっている。加入者には、1.退職後年金向け、2.住宅購入・住宅ローン返済資金向け、3.医療費向け---の3種類の用途別口座が用意されており、毎月の掛金はそれぞれ60、30、10%の割合で各口座に積み立てられる。
積立金はマレーシア政府債、短期金融市場取引手段、貸付・債券、株式などで運用され、配当率はその運用状況で決まる。(本文へ) - シンガポールの中央積立基金(CPF)は、老後の生活原資を国営基金の個人勘定に積み立てる国立積立基金の一種で、その内実は「強制積立貯蓄制度」である。当初は老後の所得保障、死亡・傷害時の生活保障を目的に導入され、以降、住宅保障、財産形成、医療保障の機能を併せ持つ総合的な社会保障システムとして発達してきた。
原則すべての被用者が加入者となり、使用者はCPFへの掛金の支払い義務を負う。掛金は年齢と所得に応じて使用者と本人が負担し(現行は一般拠出率が使用者=16%、本人=20%)、個人名義のCPF口座に拠出する。口座は用途ごとに分かれている。 (本文へ)
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