スペインにおける外国人労働者

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年6月

2000年前後から、スペインにおける移民の第三段階が始まる。これは、単に90年代末と比べて移民の数が大きく増え、日常生活やマスメディア、様々な機関で移民の姿を見ることが多くなっただけではない。移民の動きが多様化し、スペイン国内に在住する移民の構成が変化し始め、移民労働市場の再編が進み、移民流入のネットワークが形成され、同じ民族のコミュニティーが出現し、最後に移民に絡んだ紛争が起きつつあるのが、この新たな段階の特徴である。

概況

最新のデータによれば、2002年第4四半期においてスペインの労働市場には79万2400人の外国人がおり、前年よりも35万2300人増えている。この数はスペインの人口の2.39%で、男女比はほとんど同じである(男性は2.42%、女性は2.37%)。一方、EU諸国の出身者かそれ以外の国の出身者かという区分で見ると大きな差があり、前者が16万1100人であるのに対し、後者は63万1300人となっている。EU以外のうち最も多いのはラテンアメリカ出身者で、56.3%を占める。過去1年間でEU出身者の数が2万2100人増えたのに対し、EU以外の国の出身者は33万200人増えている。最も大きく増加したのはEU以外の欧州諸国からの移民で、2001年に4万1000人だったのが1年で11万9200人に達している。

教育水準

どの教育水準でも、男女とも伸びているが、最も大きく増えたのは教育水準が高い層である。高教育水準の外国人は、2001年の9万8200人に対して2002年には18万4100人となっている。特に女性では4万7500人から9万4900人に増えている。

出身地

2001年と2002年のデータを比較すると、外国人の労働力人口は15万7800人増えたが、そのほとんど、実に15万3400人がEU以外の地域の出身者である(このうちラテンアメリカ出身者が多数派)。年齢別では、男女とも25歳~54歳の層での増加が大きかった。外国人労働力人口増全体に占める男性の割合は54.16%、女性は45.83%となっている。EU以外の地域の男性は8万4400人増えたが、EU諸国出身者では1100人へっている。一方、女性はEU諸国出身者が5500人、EU以外の地域の出身者が6万9100人増えている。

男性の労働力率は全体で79.9%、女性では57.2%となっているが、文盲の男性では80%を越え(83.4%)、教育を受けていない男性は81.9%、中等職業訓練を受けた男性では82.5%となっている。一方、女性では教育水準が高くなるほど労働力率も高くなっており、高卒で57.9%、博士号取得者で63.4%となっている。

滞在期間

2001年~2002年にかけて増えた外国人労働力人口15万7900人のうち、最も大きく増えたのはスペインでの滞在期間が3年~6年のグループで、逆に労働力人口が減ったのは滞在期間1年未満のグループのみである。以上は男女ともに見られる現象である。男性では滞在期間が2~6年及び7年以上のグループで、女性では2年~6年のグループで最も増加が大きくなっている。2002年において、滞在期間1年未満のグループで最も労働力人口が多いのはEU以外の欧州諸国出身者である。ラテンアメリカ出身者は滞在期間1年~6年のグループの中で最も多く、一方滞在期間が7年以上のグループになるとEU諸国出身者が多い。

以上をまとめると、滞在期間2年未満ではEU諸国出身の男性の数が少なくなり、一方EU出身の女性労働力人口は1年未満のグループのみで減少が見られる。EU以外の地域の出身者で見るといずれのグループでも増加が見られ、両性ともに増加が最も大きいのは滞在期間2年~6年のグループである。

職種

2002年第4四半期において外国人労働者の間ではレストラン、小売業等のサービス業従事者が最も多く、9万6200人(全体の3.85%)、続いて手工業・製造業・建設業・工業・鉱業では8万5700人(2.89%)となっている。一方、事務職の占める割合は少なく1.48%、また技術的・知的職業でも1.64%である。前年と比べると、企業管理職及び公行政部門は0.47%減り、逆に未熟練労働者は2.97%と最も大きく増えている。

すでにColectivo Ioe(1999)(Colectivo Ioeはスペインにある社会経済研究機関、公的機関ではないが中央政府・自治州政府・NGO等の委託研究等を行っている)でも指摘されたように、移民労働者の間でははっきりした二極構造が見られる。つまりレベルの高い職業では先進国出身者が多く、逆に低いレベルでは「南」の出身者が多い。EU及び北米の出身者は企業管理職、技術専門職、その他のホワイトカラーが多く、その他の地域の出身者では職種は多様である。EU以外の欧州諸国の出身者は熟練労働者・機械オペレーター、中米及び南米出身者は熟練度が低い労働者に多く、特にレストラン労働者の間でかなりの割合を占めている。一方、アフリカ出身者は、熟練度にかかわらず肉体労働者に多い。

年齢

男女ともにスペイン人就業者の場合と同じく25歳~54歳の層が最も多い。2002年においては外国人就業者総数50万3500人のうち、ラテンアメリカ出身者が23万4400人と、男女ともに最大のグループとなっている。

前年と比較すると、16歳~24歳、及び55歳以上のEU諸国出身者の就業者が減っている。これを性別で見ると、EU出身の男性はいずれの年齢層でも減っているのに対し、女性は逆に増えている。EU以外の地域の出身者では、男女ともすべての年齢層において大きく増加している。また、ラテンアメリカ及びその他の地域出身の女性が減り、かわってEU以外の欧州諸国からの女性就業者が増えていることがわかる。

教育水準

2002年の外国人就業者に占める文盲の割合は、前年の7.5%から17.77%に増えている。逆に、中等教育を受けた者の割合は2001年の10.05%からわずか0.86%に減っている。一方、博士号取得者は0.86%から4.52%に増えている。以上のような傾向は、男女ともに見られる。

出身国別では、初等教育・中等教育を受けた外国人就業者の間ではラテンアメリカ出身者及びその他の地域出身者が多数を占める(特に中等教育修了者ではラテンアメリカ出身者が大多数となっている)。大学卒ではラテンアメリカ出身者が4万9000人、続いてEU諸国出身者が3万9600人、EU以外の欧州出身者が2万6300人となっている。

スペインにおける滞在期間別で見ると、1年未満のグループが減り、逆に2年目及び4年目のグループが特に増えている。EU出身者では2年~3年のグループ及び7年以上のグループが増えており、EU以外の地域では1年未満のグループが減少したのみで、2年~6年のグループでは特に大きな増加が見られた。

EU諸国出身の男性は、滞在期間2年~4年のグループを除いて全体に減少している。逆にEU以外の地域出身の男性では、1年未満のグループだけが減っている。女性について見ると、EU出身の女性では1年未満のグループ及び4年~6年のグループで減少が見られ、一方、EU以外の地域の女性では1年未満のグループだけが減少し、2年~6年のグループが大きく増えている。

就業部門

外国人就業者の31万2800人がサービス部門に集中しており、前年の23万3200人から大きく増えているのがわかる。一方、建設部門では8万4500人の増加が見られ、続いて工業部門の6万8100人増となっている。EU出身者は主に工業部門で増えているが、サービス部門でもより小幅ながら増加が見られ、逆に農業・建設部門では減少している。EU以外の地域の出身者はすべての部門で増えているが、特に女性はサービス部門で、男性は建設部門で増加している。

EU以外の地域の出身者では、ラテンアメリカ出身及びその他の地域出身の男性がサービス部門・建設部門で多く、EU以外の欧州諸国出身者は工業及び建設部門で多くなっている。ラテンアメリカ出身の女性はサービス部門で圧倒的に多く、これに大きく引き離される形でEU以外の欧州出身女性が続いている。

失業率

外国人の失業率は18%である。これを性別で見ると、男性は16.6%(スペイン全体では16.6%)、女性は20.1%(スペイン全体では20.0%)となっている。男女ともに教育水準が高いほど失業率は低く、文盲の労働者で最も高くなっている。

参考

2002年第4四半期の労働力調査によると、スペインにおける就業者数は史上最高記録を更新し、第3四半期より2万400人増えて1637万7300人に達した。一方、就業者数の増加率は前年同期比で1.59%と、第3四半期の1.78%よりも落ちている。

労働力人口は1849万5400人で、第3四半期より3万2500人増え、増加率は第3四半期より0.4ポイント少ない2.7%となっている。

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