EPF配当率、過去40年間で最低の4.25%

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年6月

従業員積立基金(EPF)は4月18日、2002年のEPF配当率を4.25%と発表した。前年の5%をさらに下回り、過去40年間で最低となった。労組は経済の回復基調を背景に昨年を上回る配当率を期待していただけに、失望感は大きく、マレーシア労働組合会議(MTUC)は抗議のピケを全国で実施する構えだ。

EPFは日本の厚生年金制度に相当するもので、1951年従業員積立基金法に基づき労使双方に掛金の拠出を義務づけている。拠出率は、従業員が月給の9?11%、使用者が同12%となっている。加入者には、1. 退職後年金向け、2.住宅購入・住宅ローン返済資金向け、3. 医療費向け-の3種類の用途別口座が用意されており、毎月の掛金はそれぞれ60、30、10%の割合で各口座に積み立てられる。

積立金はマレーシア政府債、短期金融市場取引手段、貸付・債券、株式などで運用され、配当率はその運用状況で決まる。

2002年の総収入は107.5億リンギで、ここから基金運営費などを差し引いたあとの純収入は77.8億リンギ。これが1030万人の加入者に配当される。運用先別の収益額は下表の通りである。

運用先 収益岳(%)
マレーシア政府 40.50億(42.30)
貸付・債権 30.50億(28.37)
株式 21.00(19.50)
短期金融市場取引手 9.89億(9.20)
不動産 0.18億(0.17)
その他収入 0.43億(0.46)

2002年の配当率は4.25%で、前年の5.00%から0.75%ポイントも低下した。配当率が4%台になったのは1963年以来初めてである。高度成長を背景に8%台の配当率を維持していた1980年代-90年代半に較べて、ほぼ半分に低下したことになる(下表参考)。

歴史的な低配当率になったことに関してEPF理事会は、過去4年間の低金利によって投資環境が厳しくなっていることと、株式市場の停滞が予想以上に長引いていることを指摘している。もっとも、インフレ率が1.8%であることを考慮すると、実質で2.45%のプラスの収益率であり、アブドラ副首相兼内相(首相・財務相代行)は、世界経済が後退しているさなか配当があるだけでも喜ぶべきだと、EPFの決定を支持している。

一方、労働界には失望感が広がっている。MTUCは昨年の配当率を下回る可能性があることを示唆されてから、EPFに対して再考を強く求めてきた。5%を下回った場合には、全国のEPF事務所の前でピケを張るとも警告していたが、事実、4.25%の配当率が発表されるとMTUCのランパック委員長は、ピケの日程を決める緊急評議会を近日中に開催する意向を表明した。

配当率の低下傾向はこの数年とくに顕著で、労働者の不満は鬱積していたが、今回、5%という心理的な最低ラインを下回ったことで、EPFの投資計画や運営能力が厳しく追及されていくのは必至だ。

配当率(%)
1952年~59年 2.50
1960年~62年 4.00
1963年 5.00
1964年 5.25
1965年~67年 5.50
1968年~70年 5.75
1971年 5.80
1972年~73年 5.85
1974年~75年 6.60
1976年~78年 7.00
1979年 7.25
1980年~82年 8.00
1983年~87年 8.50
1988年~94年 8.00
1995年 7.50
1996年 7.70
1997年~98年 6.70
1999年 6.84
2000年 6.00
2001年 5.00
2002年 4.25

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