労働市場と景気後退:2002年第2四半期における雇用の需要と供給の動向
景気後退にもかかわらず、雇用の需要は今のところ粘り強さを見せているようである。2002年第2四半期の労働力調査によると、雇用の伸びは前年同期比で2.3%となっているが、スペイン経済統計では1.5%である。一方、社会保障制度加入者数は2.9%増となっている。
しかしながら、景気の減速に伴って、第2四半期は第1四半期と比べると雇用の伸びがスピードダウンしていることがわかる。いずれの統計をとってみても、雇用創出の幅は2002年初頭より半減している。労働力調査では5%から2%強に減速、社会保障制度加入者数も然りである。スペイン経済統計では、3%から1.5%に落ち込んでいる。つまり、著しかった雇用成長はストップし、国際的にはいまだに高い就業人口も大きく後退しつつあるということになる。
雇用増は男性と女性の間で均等ではない。労働力調査によれば、過去1年間において新たに創出された雇用10人のうち6人は女性であった。社会保障制度加入者数の統計からも同じ結果が見られる。80年代以来、女性就業者数の増加は男性を上回っている。しかしながら、女性就業者数の増加率は4%まで低下し、2%弱を保っている男性に次第に接近している。社会保障制度加入者数では男女ともに就業者数の伸びが鈍っているが、その差は相変わらず大きく、女性の雇用増は男性のほぼ3倍となっている。いずれにしても、99年~2000年にかけて7%~10%に達した女性雇用増は突然、はっきりとストップしたようである。奇妙なことであるが、過去1年間における女性の雇用成長はより年齢が高い層に比重を移し、55歳以上の女性では7%増となっている。
過去数年間における大幅な伸びにもかかわらず、スペインの労働市場における女性の参入率は先進国の中でもきわめて低く、イタリアを除けば最低水準である。スペインでは女性労働者は労働者全体の3分の1ほどでしかないが、多くの欧州諸国では男女の割合がほぼ等しくなっている。また共産主義の伝統の遺産を継承する国々では、女性労働者の方が男性労働者を上回っているほどである。フェミニズムが伝統的にそれほど強くない南欧や極東諸国でさえも、女性労働者の占める割合はスペインよりもかなり高くなっている。
出所:国立統計庁および国立社会保障庁
出所:国立統計庁
労働市場参入時の若年層においては男女の就業率がそれほど違わないという見方が一般的であるが、実際には男女の就業率の差が最も少ない25~29歳の層でも男女の方が女性を15ポイント上回っている。20歳以下では男性の方が女性の2倍であるが、これは女性の方が就職せずに学業を続けることが多く、また失業率が高いという二つの理由による。男女間の就業率の差は若年層の10ポイントから50歳以上では48ポイントと、年齢が高くなるに連れ広がっており、これ以上の年齢層になると再び縮まるが、それも女性の就業率が高くなるからというより、男性の就業率が低くなるからである。
女性の労働市場参入を後押しする要因として教育水準があげられるが、それも通常考えられるほどではない。高等教育を受けた女性の就業率は67%で、男性の79%より12ポイント低くなっており、男性よりも就業率が高いのは博士課程を履修した女性の場合のみである。国際比較で見ると、先進諸国の中ではスペインがギリシャを除いて高学歴層における男女の就業率が最も大きな国となっている。
出所:国立統計庁『労働力調査』
ハンガリー | 51.8 |
スロバキア | 50.8 |
スウェーデン | 48.2 |
フィンランド | 47.6 |
アイスランド | 47.4 |
デンマーク | 46.9 |
ノルウェー | 46.7 |
米国 | 46.6 |
ポルトガル | 45.3 |
フランス | 44.9 |
イギリス | 44.9 |
オーストリア | 44.1 |
スイス | 44.1 |
オーストラリア | 43.9 |
ドイツ | 43.9 |
オランダ | 42.9 |
ベルギー | 42.3 |
アイルランド | 41.2 |
韓国 | 41.0 |
日本 | 40.8 |
ギリシャ | 38.0 |
スペイン | 37.3 |
イタリア | 37.0 |
出所:CEOD
中等教育以下 | 高等教育 | 全体 | |
ギリシャ | 45.5 | 12.4 | 35.9 |
スペイン | 45.1 | 14.8 | 34.8 |
イタリア | 46.8 | 12.4 | 33.9 |
ルクセンブルグ | 33.6 | 14.0 | 29.8 |
アイルランド | 39.5 | 13.3 | 29.0 |
オランダ | 32.8 | 8.8 | 21.4 |
ベルギー | 32.3 | 8.6 | 20.1 |
オーストラリア | 17.6 | 9.2 | 20.0 |
フランス | 23.6 | 8.5 | 17.7 |
ポルトガル | 19.7 | 2.6 | 16.4 |
ドイツ | 20.9 | 10.5 | 16.3 |
米国 | 26.5 | 11.6 | 14.8 |
イギリス | 17.3 | 8.0 | 14.4 |
カナダ | 20.8 | 9.2 | 11.8 |
フィンランド | 8.3 | 7.0 | 8.0 |
デンマーク | 9.2 | 4.5 | 7.7 |
スウェーデン | 14.5 | 4.1 | 4.3 |
出所:CEOD
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