最近の労働市場の動向について

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年1月

最近の労働市場の動向に関しては、回復傾向にあると捉える見方がある一方で、停滞しているのではないかとの見解も根強く示されている。

というのは、失業率は3カ月連続して6.2%を維持しているが、その内容を詳しく見ると若干の懸念材料も指摘できる。例えば、2002年8月には8万8500人分の新規雇用が創出されたものの、翌9月には3万人の者が職を失っている。またパートタイム労働者数が4万2400人も減少している一方で、フルタイム労働者数は673万人に達し、この2カ月間だけで約10万人分のフルタイム雇用が創出されている。ただ年平均で見ると、フルタイム労働者数は1万2000人増加したに過ぎず、他のデータ等を考慮しても、労働市場の展望についてなかなか確定的なことがいえない状況にある。

不完全就業問題

そうした中で、2つの報告書が不完全就業あるいは隠れた失業の問題を明らかにしている。

まずモナーシュ大学の研究者は、政府が失業者を障害者と再定義することで失業者の範囲を偽っていると主張している。つまり障害認定基準を緩めることで、仕事を見つけることができない多くの者が失業給付でなく障害年金を申請できるようにしたというのである。この点に関し報告書は、障害年金受給率と失業率を地域ごとに比較し、失業率が高い地域ほど障害年金受給率が高いことを明らかにしている。報告書は、こうした状況が早期退職という重大な問題を引き起こしかねないと見ている。ただ政府が障害認定基準を意図的に緩和しているというこの主張には、疑問の余地がある。というのは、既報のように政府は障害認定基準を厳格化する方針を打ち出している。しかし失業率が上昇に転じた場合でも、政府がこの方針を堅持できるかが今後の問題となろう。

第2の報告書は統計局(ABS)により示されたものである。ABSの報告書は不完全就業に焦点を当てており、2001年9月時点の不完全就業者数が1999年9月に比較して24%も増加したと報告している。また250万人のパートタイム労働者のうちの4分の1にあたる約60万人がより長い時間働くことを願っているにもかかわらず、十分な仕事を見つけることができないでいる。政府の定義では、週あたり2時間以上働いていれば雇用者とみなされるために、不完全就業の問題は過小評価されがちである。

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