旧・JIL国際講演会
「雇用・職業訓練・競争力のための同盟」における経験
~労働問題解決に向けたドイツ政労使の取り組み~
(2000年4月26日)
バルター・リースター
ドイツ運邦労働社会大臣
ヘルベルト・マイ
OTV公務・運輸交通労働組合委員長
ハンス・シュライバー
BDAドイツ経営者連盟副社長
司会者: お待たせいたしました。 皆様、本日はお忙しい中、また、お天気の悪い中お集まりいただきまして、どうもありがとうございます。ただいまから、「『雇用・職業訓練・競争力のための同盟』における経験」と題しまして、講演会を開催させていただきます。私は司会をさせていただく日本労働研究機構の末広でございます。 ドイツからお越しいただきました御三方は、今朝早く日本にお着きになりました。これから日本の政労使のトップの方と会見・会談をするなど、非常に忙しいスケジュールの合間をぬって、この講演会のために時間を割いていただきました。 本日の講演は、同時通訳で行います。チャンネルは、ここに書いてありますように、日本語が1番、ドイツ語が2番となっております。 それでは、本日のプログラムについてご案内いたします。まず最初に、ヴァルター・リースター・ドイツ連邦労働社会大臣にご講演いただきまして、それから公務・運輸交通労働組合ヘルベルト・マイ委員長、続きましてドイツ経営者連盟ハンス・シュライバー副会長からお話をいただきます。その後、時間は必ずしも十分取れないかもしれませんが、まとめて質疑応答の時間を用意しております。 それでは、まず開会にあたりまして、日本労働研究機構理事長、斎藤より簡単に御挨拶申し上げます。 日本労働研究機構理事長 斎藤邦彦: 日本労働研究機構理事長の斎藤でございます。本日はお忙しいところを多数お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。本日はリースター・ドイツ連邦労働社会大臣、公務・運輸交通労働組合のマイ委員長、ドイツ経営者連盟シュライバー副会長をお招きし、最近のホットな話題を中心に御講演いただく予定にいたしております。 司会者: それでは続きまして、本日の講演会にご後援いただきました労働省の岩田総務審議官からご挨拶をいただきます。 労働省総務審議官 岩田喜美枝: ご紹介いただきました、労働省の総務審議官をしております岩田と申します。本日は、こんなにたくさんの方にご参加いただきまして、ありがとうございます。ドイツの労働事情について私どもがいかに関心を持っているかに、改めて感じ入りましたし、また、今回ドイツから政労使のお客様をお招きすることに携わった者の一人として、たいへん嬉しく思っております。 司会者: どうもありがとうございました。それでは今回ご講演いただきます皆様方につきまして、簡単にご紹介申し上げます。 ドイツ連邦労働社会大臣 ヴァルター・リースター: 斎藤理事長、そしてお集まりいただきました皆様。まずはじめに、皆様のこの美しい国にお招きいただいたことに感謝申し上げます。また、今回来日いたしました公務・運輸交通労組委員長ヘルベルト・マイ、ドイツ経営者連盟副会長ハンス・シュライバー、および団のメンバー一同を代表いたしまして、同じく感謝の意を述べさせていただきます。
|
司会者: それでは続きましてヘルベルト・マイ委員長にお願いいたします。 公務・運輸交通労働組合 ヘルベルト・マイ委員長: お集まりの皆様、まず、ご招待に対し、心から感謝申し上げます。 司会者: それでは、ハンス・シュライバー副会長、よろしくお願い致します。 ドイツ経営者連盟副会長 ハンス・シュライバー: ありがとうございます。
|
司会者: 今まで三人の方から、いろいろ立場の違いが鮮明な、非常に貴重なお話をいただいたと思います。 それでは会場の皆様から質問をお受けしたいと思います。実は、この後の日程が非常に詰まっておりますので、誠に恐縮ですが、時間通り5時20分でこの会は閉じさせていただきたいと思っています。皆様の御協力をお願いします。では、御質問のある方は挙手をお願い致します。 質問者1:
今朝、来日されたばかりで、大変お疲れのところ、熱弁をふるっていただきまして、ありがとうございました。たいへん貴重な話だったと思います。 司会者: それではリースター大臣、よろしくお願いいたします。 リースター: 全部メモしましたら四点以上だったように思いますが。まず最初は、2010年から2015年まで労働力が減るという話についてですが、私どもは、これから従来までの分野でも新しい分野でも、新しい雇用を作り出すことができると思います。しかしながら、何もしなければ、雇用は減っていくと思います。積極的な労働市場政策を行えば − これは雇用促進を図っていくということで、雇用政策は市場政策以上のものですし、経済、技術、教育、税金、コスト、更には労働市場政策にも、すべての分野に関係するもので、非常に密接な関係を持っています。私が今日お話したのは「雇用のための同盟」の話だけでしたが、大事な点は連邦政府が昨年から、戦後最大の財政再建策を取っていることです。今年については280億ドイツマルクの歳出の削減を考えており、2003年までに500億マルクの削減を考えています。さらに税制の改革も考えており、2005年までの間に250億マルクの税制負担の軽減になるはずです。これがすべて、失業問題の解決に役に立つと考えているわけです。 司会者: 他に御質問ございますでしょうか。はいどうぞ。 質問者2: それでは一点だけ質問させていただきたいと思います。
マイ: まず、この五つの労働組合の統合に関連する展望ですが、これは、OTV、商業、銀行、保険業界、IGメディア、IGEドイツ郵便労組、DAGE、これらが統合し、それによってベルディという労働組合が生まれるわけで、サービス分野における300万以上の組合員を抱える最大の組織になります。発足は2001年3月に予定されています。 司会者: それではどうぞ。 質問者3:
シュライバーさんに質問があります。今、お話の中で、ドイツは労働コストが世界でも最高の国の一つであるとおっしゃいました。同じようなことを、日本の経営者団体の方も言っておられます。どのような労働コストを基に、世界でも最高とおっしゃっているのでしょうか。たとえば為替レートでいえば、1マルク=50円と考えているのか、あるいは100円=2マルクと考えるのか、それによっても変わってくると思います。 シュライバー: 私は連邦統計庁から出ている公式の統計を基にして言っているわけではなく、今おっしゃられたような現状に即して言っているわけです。失業というのは単純に、一つの原因で一つの結果が生まれるというものではありません。他にもいろいろなファクターがあります。競争力というテーマを取り上げて、失業を削減することを目標にするなら、いろいろな分野に目を向けなければいけません。従って、ローンダンピングだけが唯一の手段ではないということを、誤解を避けるためにはっきり申し上げたいと思います。 司会者: ありがとうございました。 質問者4: シュライバーさんへの質問に続けた質問をさせていただきます。ドイツの労働コストが高いとおっしゃいましたが、その点について。労働コストを引き下げるためには重要な対策が必要だと思いますが、その点で労組側との合意は成立すると思われますか? それが同盟にとってマイナス、阻害になるとは思いませんか? シュライバー: 私は、この二つの改革は今年中にも行われる、と楽観的な見方をしています。まず税制改革の問題が一つ。リースター大臣も、その点について言及されておられます。特に中・低所得層の減税を考えなければいけない。また、追加的な老齢保障を考えなければいけないとおっしゃったわけです。 司会者: どうぞ。 質問者5:
シュライバーさんにお尋ねしたかったんですが、ほとんど今、お答えいただいたと思いますが、社会保障に関して、年金以外の課題を持っておられるかどうか、お尋ねしたいと思います。 シュライバー: 本来はリースター大臣の分野だと思いますが、私に直接向けられた質問であれば、私からも答えさせていただきたいと思います。 司会者: それでは非常に残念ですが、ここまででこの会を閉じさせていただきたいと思います。貴重なお話をうかがいました。御三方に、皆さん大きな拍手をお願いいたします。 |
── 了 ── |