調査報告:企業と労働者の視点からみた仕事と介護の両立における課題
仕事と介護の両立支援を考える
第67回労働政策フォーラム (2013年5月31日)

調査報告 企業と労働者の視点からみた仕事と介護の両立における課題

矢島 洋子  三菱UFJリサーチ&コンサルティング経済・社会政策部主任研究員

写真:矢島洋子氏

私からは、具体的なデータをもとに、企業と労働者の視点から仕事と介護の両立における課題を整理します。今日報告するデータは、主に昨年度厚生労働省の委託事業で当社が実施した調査に基づくデータです。

まず、企業の側からみて、仕事と介護の両立支援の実態と課題がどうなっているかをご紹介します。

両立支援の取り組み状況

図表1 企業における「仕事と介護の両立支援」取組

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資料出所:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「平成24年度両立支援ベストプラクティス普及事業(仕事と介護の両立に関する企業調査)」(厚労省委託事業)2013年3月

注:調査は、従業員101人以上の農林水産業、鉱業、公務を除く業種5,100社を対象に郵送方式で実施。

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図表1は、企業が取り組んでいる仕事と介護の両立支援の実施状況です。これは昨年9月から10月にかけて実施したアンケート調査です。現在、どんな取り組みを実施しているのかを尋ねると、もっとも多いのは、介護休業制度や介護休暇に関する法定の制度を整えることで、9割近くを占めています。それ以外は、割合がかなり低くなり、次に多いのが、制度を利用しやすい職場づくりを行う。それから、介護に直面した従業員を対象に仕事と介護の両立に関する情報提供を行う、が続きます。このあたりは2割前後の企業が取り組んでいる状況です。現在の段階では、法定どおりの休業や休暇の制度を整える取り組みのみをしている企業が多いことがわかります。

取り組みのなかで、従業員の仕事と介護の両立に関する実態・ニーズ把握を行うことは、現在は10%ほどの企業しかありませんが、実は企業の人事の方に何が一番重要かと尋ねますと、これが今、もっとも重要だという回答が多くなっています。しかし、実際にはできていません。なぜかというと、プライバシーにかかわる問題なので、従業員から状況を聞き出すことに躊躇している企業が多いようです。

意外に少ない職場に知られる抵抗感

図表2 介護について、職場に知られることの抵抗感

図表2 グラフ:クリックで拡大表示

資料出所:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「仕事と介護の両立に関する実態把握のための調査研究(労働者調査)」(厚労省委託事業)2013年3月

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この介護について職場に知られることの抵抗感を労働者に尋ねたのが図表2になります。同じく昨年実施した調査で、男性正社員1,000人と女性正社員1,000人に尋ねました。そのなかで現在、実際に介護している男性144人、女性107人に回答してもらった結果です。

ただ、調査では介護の概念をかなり広く捉え、簡単な手助けも介護に含めました。その結果、これぐらいの割合の人が実際に介護していると回答し、その人たちが職場に知られることの抵抗感がどの程度あるかと聞くと、男性で抵抗感があると回答したのは3.5%、ややあるが16.7%、女性で抵抗感があるは5.6%、ややあるが14.0%と、男女でそれほど変わらず、抵抗感は思ったほど多くないことがわかります。

2割強が法を上回る対応を

図表3 介護休業制度の整備状況と法定を上回る対応内容

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資料出所:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「平成24年度両立支援ベストプラクティス普及事業(仕事と介護の両立に関する企業調査)」(厚労省委託事業)2013年3月

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そうしたなか、介護休業制度の整備状況と法定を上回る対応内容を尋ねたのが図表3です。現在、取り組んでいる介護休業の整備について、法定の取り組みと、それを上回る取り組みをどの程度行っているかを聞いたものです。

左のグラフでみますと、全体の22%が法定を上回る内容で整備していると回答しています。従業員規模別にみると1,001人以上では5割近くの企業が法定を上回る取り組みをしていると回答しています。

では、この法定を上回る取り組みはどのような内容なのでしょうか。それを聞いたのが右のグラフです。もっとも多いのは、取得期間を延ばすことです。法定では93日で3カ月近くありますが、これを1年365日に延長する企業が多くなっています。

昨年度はアンケートに加え、企業の人事担当者に対するインタビュー調査も実施しました。そのなかで、休業期間を延長している企業には、介護休業の期間を3カ月から1年に延ばした場合、3カ月で復帰ができない人が、1年に延長したら復帰の目途が立つのかを尋ねてみました。

すると人事担当者からは、わかりませんという答えが返ってきます。どうしてかを尋ねると、介護休業を取得した人が実際、どのように介護休業を使い、普段はどのように仕事と介護を両立しているかなど、立ち入った情報を得られていないからです。こういう手探り状態のなか、介護は期限がない、いつ終わるかわからないという従業員の不安の声に応えるために、とりあえず期間を延長する企業が出てきていることがわかりました。

約7割が所定労働時間を短縮

図表4 仕事と介護を両立するための柔軟な働き方の導入制度(介護休業・休暇を除く)

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資料出所:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「平成24年度両立支援ベストプラクティス普及事業(仕事と介護の両立に関する企業調査)」(厚労省委託事業)2013年3月

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さらに、介護休業や休暇を除いた柔軟な働き方の導入についても尋ねました(図表4)。もっとも多いのが、1日の所定労働時間を短縮する制度、つまり短時間勤務です。これを導入している企業は7割近くにのぼります。続いて、半日単位、時間単位等の休暇制度と始業・終業時間の繰上げ・繰下げが多くなっています。

ただし、制度の利用状況になると、導入割合のもっとも多い短時間勤務の利用割合は非常に低くなっています。現在、育児目的の短時間勤務制度が普及しているところですが、まだ運用に課題があり、とくに男性では利用する人がほとんどいません。そういうこともあり、短時間勤務制度は、導入している企業は多いものの、まだあまり活用されていない状況です。

一方、半日単位、時間単位等の休暇制度、それから、始業・終業時間の繰上げ・繰下げは、利用する従業員がいると回答する割合が相対的に高くなっています。

米国企業における柔軟な働き方とは

こうした柔軟な働き方は、他国ではどうなっているのでしょうか。参考までに、米国企業で適用している柔軟な働き方の調査結果をご紹介します。導入割合が高いのは、ある時間の範囲内で始業時間と終業時間を一定期間変更することができるもの、つまり、始業・終業時間の変更です。次に、休憩時間を自分で決めることができるものです。それから、家族や労働者個人の事情を理由に有給休暇をとることができるものが多くなっています。

米国の調査をみますと、米国企業が景気後退のなか、仕事と介護の両立の問題をどのように捉えてきたかがわかります。米国企業は、できるだけフルタイムに近い形で働いてもらうことが重要と考えています。先ほど申し上げた短時間勤務、あるいは長期休業に従業員が陥らないよう、できるだけフルタイムに近い形で働いてもらうために、時間帯を変更し、必要な休暇を取れるようにするなど、従業員の裁量を高める取り組みを進めています。

大企業・中堅企業は勤務場所への配慮も

図表5 仕事と介護の両立を支援するための勤務場所への配慮

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資料出所:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「平成24年度両立支援ベストプラクティス普及事業(仕事と介護の両立に関する企業調査)」(厚労省委託事業)2013年3月

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日本に話を戻しますと、こうした働き方の問題以外に、もう1つ大きな問題が、転勤の場合の対応です。

図表5は遠距離介護の問題などに対応するため、転勤の場合、勤務場所を配慮するかを尋ねています。異動・転勤先を配慮していると答えた企業は、300人以下で32.6%、301人から1,000人は49.4%、1,001人以上は65.1%と多くなっています。300人以下の企業は、事業所が限られ、異動に伴い勤務場所が変わることは少ないので、低い割合にとどまっています。

一方、大企業や中堅企業では、必要に応じて、勤務場所の配慮は既に行われています。制度化されているわけではないかもしれませんが、何らかの配慮がなされている状況がみてとれます。

介護に直面した社員への両立支援

図表6 介護に直面した社員向け:仕事と介護の両立支援の運用における取り組み

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資料出所:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「平成24年度両立支援ベストプラクティス普及事業(仕事と介護の両立に関する企業調査)」(厚労省委託事業)2013年3月

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さらに調査では、介護に直面した社員にどのような取り組みをしているかを聞きました(図表6)。もっとも多いのが、制度利用開始時に、職場の上長や人事担当者と面談を実施することです。3割強の企業がこうした面談を実施しています。続けて、職場の管理職等が日頃から介護だけでなく部下の個人的な悩みなどを聞くように周知していることです。それから、人事考課等にあたって制度利用が不利にならないような対応をしている。相談窓口・担当者を設置して、個別相談やカウンセリングに対応しているが続きます。

このように、実際に介護に直面した社員が上長、あるいは人事担当者、専門家に相談できるような仕組みづくりといったことに対応している企業がある一方で、特に何も行っていない企業が3割あります。

今日、これから紹介される2つの企業の取り組みの中でも行われていると思いますが、昨年度実施したインタビュー調査でも、現時点で先進的な取り組みをしている企業においては、こういう相談や、カウンセリングの仕組みづくりが進んでいました。

気になる人事考課への影響

図表7 管理職が両立支援制度を利用したことによる長期的な昇進・昇格への影響

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資料出所:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「平成24年度両立支援ベストプラクティス普及事業(仕事と介護の両立に関する企業調査)」(厚労省委託事業)2013年3月

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介護に直面した社員への支援として3番目に多かった、支援制度利用の人事考課への影響の問題についても聞きました。この問題は、今日会場にいらっしゃる方の中でも、関心が高いかと思います。管理職が両立支援制度を利用した場合、評価に響かないかなど、制度利用される人にとっても大きな関心事だと思います。

調査では、管理職が両立支援制度を利用したことによる長期的な昇進・昇格への影響について尋ねました(図表7)。影響するは3.7%、やや影響するは10.3%となりました。影響するとはっきり答えたところはかなり少ない状況です。ただ、私が気になるのは、わからないと答えた3割近くの企業です。この「わからない」という状況が、制度利用される人にとって、不安材料になるのではないかとみています。

男性も無関心ではいられない

次に、就労者の立場から見た両立支援の実態と支援ニーズをご報告します。

図表8 40代・50代の就労者(正社員)の親の介護状況

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資料出所:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「仕事と介護の両立に関する実態把握のための調査研究(労働者調査)」(厚労省委託事業)2013年3月

注:調査は、40歳代~50歳代の就労者(正社員)男女各1,000人と、介護を機とした離職者(離職前は正社員)男女計1,000人を対象に、インターネット上でのモニター調査により実施。

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図表8は、先ほどご紹介した男性・女性それぞれ1,000人の正社員を対象とした調査です。男性で介護を担っている人は14.4%、女性では10.7%です。この数値の背景として、女性は介護で離職している人が多いことがあるとみられます。調査は、40代、50代で、会社に残って正社員として働いている方を対象としていて、こうしたベースで介護に携わっている割合をみると、男女差はほとんどないともいえます。

問題は、男性の場合、配偶者がいる・いないでこの割合が変わることです。配偶者がいない男性は、介護を担っている割合が2割になります。おもしろいのは、配偶者がいる男性では、妻が専業主婦の場合でも働いている場合でも、介護を担う割合に変化がないことです。妻が専業主婦だから男性は介護をしないわけではないのです。

今回調査では、介護の概念を広めにとっています。ちょっとした手助けも含めて回答しているかもしれません。どの程度、介護をしているかは別として、妻が専業主婦だからといって男性も介護に無関係ではいられないことが見てとれます。

働きながら介護している人の内容

図表9 正社員として働きながら介護している人の介護内容:就労者

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注1:「介護を必要とする父母が1人」で「1人の父母を介護している」回答者のみを対象として集計している。

注2:各担い手の割合は、「行われている介護」を100として算出したもの。

資料出所:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「仕事と介護の両立に関する実態把握のための調査研究(労働者調査)」(厚労省委託事業)2013年3月

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次に、正社員として働きながら介護している人の介護内容をグラフにしました(図表9)。

棒グラフが介護全体です。今回調査対象となった人が介護している要介護高齢者の54.9%が、排泄や入浴等の身体介護を必要としていることがわかります。このうち、実際に正社員として働いている方が自分で行う割合は11.3%とかなり低くなっています。そのかわり、事業者や要介護者の配偶者が担う割合が高くなっています。

では、正社員として働きながら介護している調査対象者は何をしているのかというと、入退院手続きや金銭管理、サービス利用にかかる調整・手続きなどをしています。先ほど、佐藤先生がマネジメントとおっしゃいましたが、そういうことをやっている割合が高くなっています。

離職者は自らが介護を負担する傾向が

同じ内容を介護で離職した人についてみたのが図表10です。

図表10 正社員として働きながら介護している人の介護内容:離職者

図表10 グラフ:クリックで拡大表示

注1:「介護を必要とする父母が1人」で「1人の父母を介護している」回答者のみを対象として集計している。

注2:離職前の介護状況について聞いている。

注3:各担い手の割合は、「行われている介護」を100として算出したもの。

資料出所:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「仕事と介護の両立に関する実態把握のための調査研究(労働者調査)」(厚労省委託事業)2013年3月

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全体の介護の量も、少し多くなっていますが、特徴的なのは、本人が介護する割合が非常に高いことです。この調査は、介護で離職した人が離職前に行っていた介護の状況を聞いたものです。これをみると、正社員として働きながら5割近くの人が直接身体介護を担っていたことがわかります。先ほどの両立している人と比べ、身体介護や家事など、日々手がかかることを自分でやっていた割合が高いことがわかります。こうしたことを自分で行うと、仕事を続けていくのが厳しいことがみてとれます。

身体介護や家事、見守りなどは毎日、発生してくるものです。一方、先ほど見ていただいた両立している人が担っている、サービスの調整や入退院手続き、緊急搬送時の対応などは頻度が高くありません。こうしたサービス利用にかかる調整や手続きをしながら働いている場合と、自分で全部介護しながら働いている場合では、仕事の続けやすさに差があるように考えられます。

仕事と介護の両立における不安

仕事と介護の両立における不安をグラフにしたのが図表11です。

図表11 仕事と介護の両立における不安の具体的内容

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資料出所:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「仕事と介護の両立に関する実態把握のための調査研究(労働者調査)」(厚労省委託事業)2013年3月

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これをみると、働きながら介護している人で一番高いのは、自分の仕事を代わってくれる人がいないことです。一方、離職者でみると、介護休業制度等の両立支援制度がないことをあげています。また、現在まだ介護をしてない人では、介護サービスや施設の利用方法、両立支援制度の中身がわからないことが不安材料になっています。

不安として上げられているもののうち、離職者と現在介護している人の両方で高いのが、人事評価に悪影響が出る可能性です。さらに、離職者と介護する親がいるものの自分で担っていない人で共通するのが、労働時間が長いことです。ここは突っ込んで検討しないとわかりませんが、現在介護する親がいるのに、自分で担えていない人は、自分の職場環境が厳しいので、ほかの兄弟や配偶者などに担ってもらっている状況があるかもしれません。

勤務先に相談する人は少ない

このような不安を抱えながら、どのようなところに介護の相談をしているのでしょうか。

相談先で一番多いのは家族や親族です。次に、ケアマネジャーが専門家としてかなり頼られています。特に今、両立している人はケアマネジャーに相談している割合が高くなっています。それから、これはもっと知られたほうがいいと思うのですが、地域包括支援センターへの相談もあがっています。

一方、みなさまのご関心のある勤務先への相談は、非常に低い割合になっています。これは、先ほどみていただいたように、職場に知られることへの抵抗感があるから相談しないのではないようです。では、どうして相談しないかというと、やはり相談してもどうにもならないと思われているからです。就労者から見ると、残念ながら、今のところ、勤務先は相談先として頼られていない状況ではないかと思われます。

両立のイメージづくりを

図表12 介護を機とした離職後の変化(負担)

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資料出所:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「仕事と介護の両立に関する実態把握のための調査研究(労働者調査)」(厚労省委託事業)2013年3月

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先ほど、佐藤先生からもお話がありましたが、介護を機に離職してしまうと、精神面、肉体面、経済面で負担が増します(図表12)。仕事と介護を両立するのは精神的にも、肉体的にも、経済的にも苦しいと思うかもしれませんが、辞めるともっと苦しくなることをわかっていただく必要があるかと思います。

こういう状況を踏まえて、仕事と介護を両立するにはどのような支援が必要かを考えますと、企業における取り組みが重要なことは言うまでもありません。ただ、企業内の取り組みだけでは限界があることも見えてきました。企業だけではなく、社会全体を巻き込んだ仕事と介護の両立を肯定する意識の醸成、仕事と介護の両立モデルの提示、両立可能な介護の仕組みづくり、こうした仕組みを活用した両立事例が求められます。

子育ての場合なら、育児休業をとり、短時間勤務で復帰し、ある程度やっていけるイメージがようやくできあがってきました。しかし、介護の場合はこうしたものがありません。これは大きな問題です。こうした両立事例のイメージをつくっていくことが必要なのではないかと思います。

多様な社会資源の活用を

介護をする場合、企業において、両立できるような働き方を提供することは重要です。ただ、企業だけが努力しても調査でみた離職者のように働く介護者が1人で介護を抱え込んでしまっては、支援することが難しくなります。では、両立する人が困らないように介護保険のサービスを増やしてくれといっても、財源の問題も取り沙汰されているなか、大幅に増やすことは難しいと思います。

介護においては、家族や親族の役割も重要です。さらに、地域での取り組みも必要となります。こうした多様な社会資源があることを認識してもらい、それぞれを少しずつ活用してもらうことが重要です。介護保険についても、大幅にサービス量を増やすことはできなくとも、サービス内容や提供の仕組みなどを両立の視点から見直して、再度構築していく必要があるのではないかと思います。

企業と社会が一体で取り組む

具体的に、企業と社会、それぞれに必要な取り組みをあげます。

まず企業には、実態把握に加え、両立支援の方針を明確にすることが求められます。企業の方から会社を辞めないほうがいいよ、続けられるのではないかというメッセージを出すことが重要です。介護に直面する前から両立のイメージを抱いてもらえるよう情報を提示することが必要です。さらに、両立可能な介護の仕組みづくりとしては、柔軟な働き方の可能な職場づくりということで、長期の休業よりも、必要なときに取得できる休暇や時間帯の調整、柔軟な働き方に即した人事評価制度の構築が求められます。

一方、社会全体でいうと、両立の視点に立った介護の実態がなかなか把握されていないのが現状です。こういう状態なら、どういうサービスが利用できるのか。どうサービスを利用したら生活が成り立つのかという情報がありません。こうした実態把握が求められます。さらに、介護イコール離職イメージの払拭、仕事と介護の両立の視点からアドバイスできるケアマネジャーの育成も非常に重要だと思います。

こうした取り組みを通じて、社会、企業が一体となって、仕事と介護の両立を可能にするイメージや制度づくりをすすめていくことが必要なのではないでしょうか。