年金保障制度改革案、国会を通過

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  • 国別労働トピック:2004年3月

憲法追加修正案として政府が準備していた、2003年初めに国会審議に提出されていた年金保障制度改革案は、上下両院を数回往復したあと2003年12月11日に上院で承認され、大統領署名を待つばかりとなった。改革案といっても、政府が作った原案は骨抜きにされ、公務員絶対優先の現状は何も変更されていない。年金保障制度は公務員の年金支払いのために財政破綻状態となっており、政府の改革案でも、公務員待遇の変更が主体となっている。

改革案の要点は次のとおりである。

  1. 公務員の年金生活者は、退職時の給料を、終身、年金として受け取ることに変更はない。改正法の適用を受ける公務員は、社会保障制度の分担金納付期間によって受給金額は異なる。公務員の年金受給には男性60歳、女性55歳以上での退職を要する。分担金納付期間は男性35年、女性30年とし、20年以上公務員として勤務した場合に公務員年金を受給できる。
  2. 公務員年金受給者は現役が調整を受けると、同率で年金受給額の調整を受けていたものを、同率調整は廃止する。
  3. 将来の公務員は最高2400レアル(約800ドル;民間は最高1869レアル)の年金とし、年金の補足を希望する場合は「公務員補足保障ファンド」に加入してまかなう。
  4. 現行制度を利用しようと、2005年までに繰り上げて退職する公務員は受給予定額から35%控除する。2006年以降の繰り上げ退職は5%控除する。
  5. 現行公務員退職制度を満たしながら、なお勤続する場合は、年金から差し引く11%の分担金は免除する。
  6. 将来の公務員年金は最高2400レアルとし、これを超える分は30%控除する。
  7. 公務員年金受給者には納付金を設定する。州公務員年金受給者のうち1200レアル(約400ドル)以下の受給者は納付金免除、連邦公務員は1440レアル以下を免除とする。
  8. 現行法では連邦最高裁判事の年金は最高月額1万7800レアル(約5933ドル)としており、既得権取得者は、現行制度を維持する。州公務員は州知事の年金を超えてはならない。新法令は2200レアルに制限する。
  9. 同一人に連邦が支払う年金は、連邦最高裁の1万7300レアルを超えてはならない(公務員はいくつもの年金を累積して受け取れる制度になっているため)。
  10. 民間の年金は最高を1869レアルから2400レアルへ引き上げる。
  11. 公務員の年金分担金は、11%に統一する。

公務員労組は、行政訴訟によって、改革案の実施を阻止すると予告している。なお政府は労働法改正案、労組規正法の改正案も、2003年中に国会審議を完了したいと発表していたが、税制改革案の国会審議が遅れたために、2003年中には実現しなかった。税制改革は、国会承認を受けた翌年以降でないと発令できない規定となっているために、政府は2003年度内に税制改革案の国会通過に集中し、他の改革案審議は2004年に持ち越された。

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