就労者の平均収入が過去最大の減少

カテゴリー:雇用・失業問題労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2004年3月

労働党政権の初年度となった2003年は、年末になっても雇用市場にはなんらの好転も見えず、就労者の収入は低下を続けている。ブラジル地理統計資料院(IBGE)の発表によると、2002年12月の公式失業率10.5%、2003年1月の11.2%に対し、2003年10月は9月と同じ12.9%となり、年間で最も雇用が拡大する10月に、2003年は高い失業率を維持して例外的存在となった。また就労者の平均収入は前年同月比で9月に-14.6%となっていたものが、10月は-15.2%となり、過去最大のマイナス幅となっている。

エコノミストは、労働党政権がIMFと協定した以上に政府のプライマリー黒字バランスを拡大して政府支出を抑制し、インフレ抑制を目的に消費拡大を避けたことと、政府負債運用を容易にしようと年間17.5%もの高い標準金利を維持していることが、高率失業継続と収入低下等、経済活動の回復を阻止している原因であり、2003年のGDPはゼロ成長に向かっており、大衆は失業増加、就労者の収入低下を補おうと、家族のなかから働きに出る人数が増加し、それがさらに就職競争を激化させて、新規採用の給料水準を下げる悪循環時期に入ったと分析している。

労働党政権が誕生した2003年1月1日に、6大首都圏では220万人だった失業者が、2003年10月には270万人へと増加した。雇用を生み出す生産部門が、労働党政権の行政を分析しようと投資を控えていることが、労働市場の回復を遅らせている。例年なら年末には経済活動が活発化するのが常であり、生産も増加するが、企業家は先行きに不安を持っているために、受注が増加しても超過勤務でまかなって、新規雇用を避けている。2003年10月の超過勤務は前年同月比で3時間増加した。

中央労組の社会経済研究機関であるDIEESEでも、2002年12月に18.5%だったサンパウロ首都圏の失業率が、2003年10月は20.4%へ増加したと発表した。前月の20.6%からわずかに下がったが、まだ20%以上の高率を維持していることに変わりはない。人数では9月の203万人の失業者が10月は201万9000人に下がっている。この調査でも9月比で10月は就労者の月間就労時間が1時間増えて、企業は労働力の新規採用よりも,超過勤務で切り抜けていることを証明した。DIEESEでも、経済成長が起こらず、政府が高金利政策を維持している間は、雇用市場に見るべき好転は起こらないだろうと評価している。就労者の平均収入は、1985年にこの調査を開始した時は1873レアルであったが、次第に低下して2003年は約半分の915レアルに下がったと発表した。

労働者の収入低下を反映して小売部門は不振が続いている。ブラジル地理統計資料院(IBGE)の発表では、2003年10月の全国小売は前年同月比で3.04%低下し、これで2003年の10カ月は4.96%の低下となり、2003年がプラスになる期待はないと予想している。2001年も-1.57%、2002年も0.69%落ち込んでいるために3年連続後退が予想されている。

労働市場のデータが次第に悪化していることに対してジャッケス・ワグネル労相は、「失業減少とは経済成長に向けた投資が拡大しないかぎり起こらないもので、奇跡は起こらない。雇用に関する大部分の指数は非常に悪く、この現実を否定することはできない。しかし、標準金利を下げ、四輪や家電製品の工業製品税の減税、個人クレジットの拡大政策などにより、工業設備の遊休減少、生産拡大など、その反応が見え始めた。今後は生産投資拡大に向けた努力が必要になる。2003年は100万人の新雇用ができる予想を持っているが、毎年150万人の労働力が成長してくるために、失業のドラマは悪化する」と予想している。

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