基礎情報:アメリカ(2013年)
4. 賃金・労働時間・解雇法制
4-1 最低賃金制度
連邦最低賃金と州別最低賃金がある。根拠法はそれぞれ公正労働基準法(1938)と各州法。連邦最低賃金は公正労働基準法で直接に額を規定する。州最低賃金は州法もしくは審議会で決定する。連邦最低賃金の対象となるのは年商50万ドル異常の企業あるいは州際通商のための物品生産に従事する企業。チップを受け取る労働者の賃金は最低賃金よりも低くなっている。
4-2 最低賃金額の推移
1995年 | 2000 | 2005 | 2007 | 2008 | 2009 | 2010 | 2011 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
4.25 | 5.15 | 5.15 | 5.85 | 6.55 | 7.25 | 7.25 | 7.25 |
※一般(22歳以上)の場合。
資料出所:労働省(DOL)
4-3 労働時間制度
- 根拠法:
- 公正労働基準法(1938年制定)
- 法定労働時間:
- 1週40時間
- 罰則:
- 故意に違反した場合(40時間を超えて労働させた場合において1.5倍の割増賃金を支払わなかった場合、 1万ドル以下の罰金又は6か月以下の禁固又はその両方。
- 適用関係:
- 適用除外
管理的被用者、運営的被用者、専門的被用者、外勤営業職(ホワイトカラーエグゼンプション)、季節的な娯楽・レクリエーション事務所等の被用者、水産業の被用者、一定の条件の下で雇用された農業労働者、小規模地方新聞社の被用者、小規模な独立公共電話会社の交換手、アメリカ船以外の船員、臨時的子守又は個人の介護のために家事労働に雇われる被用者、犯罪捜査官、コンピュータ関連職
- 法定労働時間の特例:
- 特定の業種、企業に関して特例あり。
- 石油製品の卸又は大量販売の地方的独立企業(年間売上100万ドル未満等)。
- 小売又はサービス業について、その労働者の通常賃金率が最低賃金の1.5倍以上かつ賃金に占める歩合給の割合が5割以上の場合、割増賃金の支払いを要しない。
- タバコの葉の製造について、1日10時間、1週48時間(年間14週を限度)。
- 弾力的労働時間制度:
- 26週単位の変形制
労働協約により26週当たり1,040時間を上限として、特定の週に法定労働時間を超えても割増賃金の支払いを要しない。どの26週をとっても1,040時間以内であることが必要。但し、1日12時間、1週56時間を超える労働に対しては、1.5倍の割増賃金を払わなければならない。これを怠った場合又は1,040時間を超えて労働させた場合は、26週の各々について1週40時間の規定が適用される。
52週単位の変形制
労働協約により52週について1,840時間以上2,080時間以下の時間が保障され(労働がなくとも時間分の賃金の支払いは保障される)、かつ、2,240時間が上限として規定されている場合に、特定の週に法定労働時間を超えても割増賃金の支払いを要しない。
1日12時間、1週56時間を超える労働に対しては、1.5倍の割増賃金を支払わなければならない。これを怠った場合又は2,240時間を超えて労働させた場合は52週の各々について1週40時間の規定が適用される。保障時間を超えて労働させた場合、超えた時間について1.5倍の割増賃金を支払わなければならない。
- 時間外労働(上限規制、割増賃金率):
- 上限規制 連邦法上の規定なし
割増賃金率 50%
- 休日労働(割増賃金率):
- 連邦法上の規定なし
割増賃金率 法令上の規定なし
- 年次有給休暇制度における継続勤務要件:
- 法令上の規定なし
- 年次有給休暇の付与日数:
- 連邦法上の規定なし
- 年次有給休暇の連続付与:
- 法令上の規定なし
- 年次有給休暇の付与方法:
- 法令上の規定なし
- 未消化年休の取扱い:
- 法令上の規定なし
4-4 解雇法制
個別的解雇
- 連邦法が規制している解雇は以下の5つ。
- 人種・皮膚の色、宗教、性、出身国を理由とする解雇(公民権法第7条)
- 年齢を理由とする解雇(年齢差別禁止法)
- 障害を理由とする解雇(障害を持つアメリカ人法)
- 組合活動や組合加入を理由とする解雇
- その他法律上の権利行使や手続の利用に対する報復としての解雇
- 州法が連邦法と別個に規制する解雇の事例。
- 性的志向(ホモセクシュアルやレズビアン等)を理由とする解雇
- 既婚・未婚といった婚姻上の地位を理由とする解雇
- 過去の逮捕歴を理由とする解雇。
州によっては、以下のような何らかの明確な法規範に示された公的政策に反する解雇に制限を加えている(「パブリック・ポリシー法理」)。
(1) 使用者からの違法行為の指示に反した労働者の解雇、(2) 適法な内部告発を理由とする解雇、など。また、契約上正当事由がなければ解雇しないと定めている場合の解雇に対しては、契約違反として逸失利益の賠償を求めうる(「契約法理」)。契約当事者間の「誠実・公正義務」として、相手方の期待を破壊するような行為はしてはならず、これに反するような解雇は契約違反として逸失利益の賠償を求めうる(「誠実・公正義務法理」)。なお、モンタナ州においては、唯一、違法解雇を規制する州制定法が定められている。
労働組合に組織されている事業所で,解雇に対する「正当事由」を求める内容が労働協約に織り込まれていれば、不当な解雇に対して労働者は労働協約上の苦情処理手続を通じて救済を求めることができることがある。
集団的解雇
労使交渉でセニョリティ・ルール(先任権制度)を定めている場合、もしくは使用者が認めている場合は、勤続年数の長さが基準となることがある。
労働者調整・再訓練予告法により、大量解雇の実施について手続的規制が定められている。
- 事業所閉鎖又は大量レイオフを予定する一定の要件に該当する使用者(100人以上のフルタイム労働者を使用するか週20時間未満就労するパートタイム労働者を含めて100人以上の労働者を時間外労働を除き週当たり合計4千時間以上使用する使用者)は、交渉代表労働組合かそれがない場合には各労働者、ならびに州及び地方政府の関係機関に、60日以上前にその旨を通知しなければならない。但し、自然災害等により合理的に予見できない場合は予告義務を課されない。
- 使用者が予告義務に違反した場合、労働者は予告不足日数分の賃金及び諸給付のバックペイを請求できる。
基礎情報:アメリカ(2013年)
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- 3. 能力開発・キャリア形成支援
- 4. 賃金・労働時間・解雇法制
- 5. 社会保障
- 6. 労使関係
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