メールマガジン労働情報 No.2003

■□――【メールマガジン労働情報/No.2003】

「過労死等防止対策白書」公表、医療・芸能従事者などの働き方を調査分析/厚労省 ほか

―2024年10月16日発行――――――――――――――□■

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  本号の主な内容
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【行政】「過労死等防止対策白書」公表、医療・芸能従事者などの働き方を調査分析/厚労省 ほか
【統計】約95%が1年前と比べ「物価上昇を実感」/日銀・生活意識アンケート調査 ほか
【労使】中小企業の5割が「価格引上げ(転嫁)を実現」/全国中小企業団体中央会
【動向】24年度上半期の全国企業倒産、10年ぶりに5,000件超え/民間調査
【企業】傷病休暇「リザーブ休暇」を導入/大和リース ほか
【海外】米東海岸の港湾労組が47年ぶりに大規模スト ― 6年間に61.5%の賃上げで暫定合意/アメリカ
【イベント】「今こそ取り組みたい、戦略的な賃上げ~外部環境と賃上げ検討のポイント」説明会/東商

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おかげさまで通巻2000号!今後もご愛読ください
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平成15年に配信を開始した「メールマガジン労働情報」は、おかげさまで2000号に到達しました。
記念企画として、JILPTの現職および歴代理事長5名の学識者によるコラムをリレー形式でお届けします。
在任中の出来事や労働問題・労働政策研究を巡る課題、研究機関としてのJILPTの役割などについて論じています。
引き続きのご愛読・ご支援のほどよろしくお願い申し上げます。

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第4回 理事長在任中に思ったこと──予期せぬ二つの出来事と研究課題
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 樋口 美雄 JILPT顧問/慶應義塾大学名誉教授

私が労働政策研究・研修機構(JILPT)の理事長に就任したのは、2018年4月のことであった。以来、在職
していた5年間、今、思えば、すべて理事や研究員、調査員、そして職員の皆さまに助けてもらいっぱなし
であった。JILPTではご存じの通り、5年間を1期の中期計画としており、私が理事長に就任したのは
第4期の中期計画が始まった2年目の4月であった。本来、1年目から就任すればよかったが、前職との
関係で、この期の2年目から就任することになった。前任の菅野先生には無理を言って、1年間、理事長の
仕事を延長してもらうことになった。改めてここに御礼申し上げたい。
その結果、就任時にはすでに第4期はスタートしており、研究も調査も、そして労働大学校の講義、
機構の運営もすべて軌道に乗っていた。私のすべきことと言えば、皆さんの仕事の邪魔をしないこと、
足を引っ張らないことぐらいであった。
https://www.jil.go.jp/kokunai/mm/memorable/2000th/04.html

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【JILPT研究成果情報】
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◇調査シリーズ No.246『「最低賃金の引上げと企業行動に関する調査」結果
 ―2021・2022年度の連続パネル調査を通じて―』
https://www.jil.go.jp/institute/research/2024/246.html

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【JILPTからのお知らせ】
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★JILPTリサーチアイ 第83回 「『job tag』(日本版O-NET) の数値情報に関する誤解と実際」
 鎌倉哲史 職業構造・職業指導部門 副主任研究員

2020年3月より厚生労働省が運営する職業情報提供サイト(日本版O-NET; 以下「job tag」という)が
正式にサービスを開始した。当機構ではjob tagのコンテンツのうち、職業解説、しごと能力プロフィール、
自己診断ツール等に関して情報提供を行っており、筆者が担当するのはしごと能力プロフィールと呼ばれる
職業に関する多面的数値情報である。
https://www.jil.go.jp/researcheye/bn/083_241011.html

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【行政】
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●「過労死等防止対策白書」公表、医療・芸能従事者などの働き方を調査分析/厚労省

厚生労働省は11日、「2024年版過労死等防止対策白書」を公表した。「過労死等防止対策大綱」が重点対象と
している業種等(医療、芸術・芸能分野)の分析では、医療従事者の精神障害の労災認定件数(2010~20年度)
が増加傾向にあること、芸術・芸能では、週の拘束時間「60時間以上」が35.2%、1カ月当たりの休日数が
「週1日に満たない」が27.0%、「うつや不安障害がある」が30.5%などとしている。
脳・心臓疾患の労災支給決定事案の分析では、2021年の認定基準改正で追加された「勤務間インターバルが短い」
と「拘束時間の長い勤務」がともに、「労働時間以外の負荷要因別」事案数の24.7%を占め、「不規則な勤務・
交替勤務・深夜勤務」が21.6%となっている。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44199.html
▽概要
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001314851.pdf

●ストレスチェック義務化、50人未満の全事業場への拡大を提起/厚労省検討会

厚生労働省は10日の「ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会」で、中間とりまとめ案を
示した。産業医の選任義務のない「50人未満」事業所におけるストレスチェックの実施は、当面「努力義務」と
されているが、「労働者のメンタルヘルス不調の未然防止の重要性は、事業場規模に関わらない」として、
実施義務対象を「50人未満の全ての事業場に拡大することが適当である」と提起。ただし、実施内容を一律に
求めるのは困難なため、50人未満の事業場に即した実施体制・実施方法等について整理し、マニュアル
(モデル実施規程を含む)等を作成すべきであるなどとしている。(中間とりまとめ案・P6~8)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44232.html

●第14次労働災害防止計画1年目の実施状況を公表/厚労省

厚生労働省は9日、安全衛生分科会で第14次労働災害防止計画1年目の2023年の実施状況を報告した。
高齢労働者、外国人労働者、個人事業主や建設等の業種別労働災害防止などの重点対策に沿ってまとめている。
建設業では、アウトプット指標「墜落・転落災害の防止に関するリスクアセスメントに取り組む事業場割合を
2027年までに85%以上」に対して85.4%を達成、アウトカム指標「死亡者数を2027年までに15%以上減少」も
20.6%減と目標を上回った。陸上貨物輸送でも、アウトプット指標「荷役作業における安全ガイドラインに
基づく措置を実施する事業場の割合を2027年までに45%以上」に対し、1年目で59.8%を達成している。
https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001314287.pdf

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【統計】
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●約95%が1年前と比べ「物価上昇を実感」/日銀・生活意識アンケート調査

日本銀行は10日、生活意識に関するアンケート調査(第99回・2024年9月)の結果を発表した。
物価に対する実感(1年前対比)は、「かなり上がった」が63.8%、「少し上がった」が30.9%で、
94.7%が物価上昇を実感している。現在の景況感DI(1年前対比で「良くなった」-「悪くなった」)は
マイナス48.2で前回調査(24年6月)より1.6ポイント改善。暮らし向きDI(「ゆとりが出てきた」-
「なくなってきた」)はマイナス47.4で前回調査より4.7ポイント改善。
雇用環境DI(1年後をみた勤め先での雇用・処遇の不安を「あまり感じない」-「かなり感じる」)は
マイナス2.2で前回比3.1ポイント改善した。
https://www.boj.or.jp/research/o_survey/ishiki2410.htm
▽全文
https://www.boj.or.jp/research/o_survey/data/ishiki2410.pdf

●8月の生産指数、前月比3.3%低下/鉱工業指数確報

経済産業省は15日、8月の「鉱工業指数(生産・出荷・在庫、生産能力・稼働率)」確報値を公表した。
生産指数(季節調整済)は前月比3.3%低下の99.7で2カ月ぶりの低下。業種別で低下したのは、自動車工業、
電気・情報通信機械工業、生産用機械工業等、上昇は輸送機械工業(自動車工業を除く)、化学工業
(無機・有機化学工業を除く)、電子部品・デバイス工業など。出荷は前月比4.1%、在庫は同0.8%の
いずれも低下。在庫率は同5.3%の上昇。速報に比べ、生産は変わらず、出荷、在庫は下方修正、在庫率は上方修正。
https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result-1.html
▽概要
https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result/pdf/press/b2020_202408kj.pdf

●生活保護の保護申請件数、前年同月比11.5%増/被保護者調査(7月分)

厚生労働省は2日、生活保護法に基づく「被保護者調査」(2024年7月分概数)結果を公表した。
保護の申請件数は2万5,235件で、前年同月比2,608件(11.5%)増。保護開始世帯数は2万1,164世帯で、
同2,230世帯(11.8%)増。被保護世帯は165万4,044世帯で、同3,552世帯(0.2%)増。被保護実人員は
201万3,327人で、同7,365人(0.4%)減。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/hihogosya/m2024/07.html
▽報道資料(2024年7月分概数)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/hihogosya/m2024/dl/07-01.pdf

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【労使】
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●中小企業の5割が「価格引上げ(転嫁)を実現」/全国中小企業団体中央会

全国中小企業団体中央会は1日、2024年度の中小企業労働事情実態調査結果を公表した。原材料費・人件費等
の増加による販売・受注価格への転嫁状況については、「価格引上げ(転嫁)を実現した」割合は49.9%で、
前年調査(49.5%)からほぼ横ばい。内容は「原材料費分の転嫁」が74.7%と最多だが、「人件費引上げ分
の転嫁」(40.3%)が2年前と比べ16.6%増加した。賃上げは、約60%が6月までに実施済み、7月以降の
引上げ予定を含めると70%超。改定内容は「定期昇給」(50%超)、改定決定要素は「労働力の確保・定着」
(64%)が最多。加重平均賃上率は3.74%。調査は、従業員規模300人以下の約4万事業所を対象に実施。
https://www.chuokai.or.jp/images/2024/09/20241001_R6roudougaiyou.pdf

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【動向】
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●24年度上半期の全国企業倒産、10年ぶりに5,000件超え/民間調査

東京商工リサーチが8日発表した「2024年度上半期(4~9月)の全国企業倒産(負債額1,000万円以上)状況」
によると、倒産件数は5,095件(前年同期比17.8%)と3年連続で前年同期を上回り、10年ぶりに5,000件台に
乗せた。負債総額は3年連続で1兆円を超えたが、2022年度同期をピークに減少。100億円以上の倒産が減少
した一方、10億円未満の倒産が増加し、中堅規模に広がりをみせたと指摘。
同社ウェブサイトには、上半期の「後継者難」倒産や「物価高」倒産状況などのレポートも掲載している。
https://www.tsr-net.co.jp/news/status/detail/1198973_1610.html
▽「後継者難」倒産状況
https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1198979_1527.html
▽「物価高」倒産状況
https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1198976_1527.html

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【企業】
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●傷病休暇「リザーブ休暇」を導入/大和リース

大和リースは2日、傷病休暇「リザーブ休暇」を2024年10月より導入すると発表した。有休を使い切った後の
セーフティネットとして同休暇制度を新設する。取扱いは年次有給休暇と同じ、付与日数は1年度に5日まで
(翌年度への繰越なし)、半日単位の取得も可能。取得条件は、私傷病(メンタル不調以外)により業務に
従事できない者で、連続4日取得する場合は医師の診断書が必要となる。
https://www.daiwahouse.co.jp/about/release/group/pdf/g_release_20241002.pdf

●奨学金返還支援制度を導入、最大120万円を支援/アルビス

北陸地方を中心にスーパーマーケットを展開するアルビスは8日、奨学金返還支援制度の導入を発表した。
入社後最大10年間(35歳の誕生月まで)で最大120万円を支援する。若手社員の経済的・心理的負担の軽減、
優秀な人材獲得および入社後のモチベーション向上につなげていくとしている。開始は2025年4月。
https://ssl4.eir-parts.net/doc/7475/announcement/104130/00.pdf

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【海外】
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●国別労働トピック/JILPT

<アメリカ>
▽米東海岸の港湾労組が47年ぶりに大規模スト ― 6年間に61.5%の賃上げで暫定合意

労働協約改定に伴う米国海運連合(USMX)と国際港湾労働者協会(ILA)による米東海岸の港湾労働の労使交渉が
期限内に合意できず、ILAは10月1~3日にストライキを行った。現地報道によると、この間、少なくとも
14カ所の港湾が閉鎖され、47年ぶりの大規模なストライキとなった。賃金引き上げの水準に加え、
自動化技術の導入をめぐって労使が対立していたが、ILAは10月3日、今後6年間で61.5%の賃上げを行う
などとするUSMXの提案を受け入れて暫定合意に達し、ストライキは収束した。ただし、自動化技術の導入
に関しては合意に至らず、来年1月15日を期限に交渉を継続することとなった。(JILPT調査部)
https://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2024/10/usa_01.html

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【イベント】
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●「今こそ取り組みたい、戦略的な賃上げ~外部環境と賃上げ検討のポイント」説明会/東商

東京商工会議所は11月20日(水)、「今こそ取り組みたい、戦略的な賃上げ~外部環境と賃上げ検討のポイント」
と題する人事・労務担当者向け説明会を会場(東京都千代田区・東商カンファレンスルーム)で開催する。
賃上げが着実に広がりつつある一方で、防衛的な賃上げも多く持続性の点で課題も残るとして、来年の賃上げ
検討にあたって抑えておくべきポイントを外部環境・内部環境の両面から解説する。
参加無料。定員80名。要事前予約。
https://myevent.tokyo-cci.or.jp/detail.php?event_kanri_id=204546