メールマガジン労働情報 No.1943

■□――【メールマガジン労働情報/No.1943】

持続的な構造的賃上げの実現について議論/新しい資本主義実現会議 ほか

―2024年3月1日発行――――――――――――――□■

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  本号の主な内容
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【行政】持続的な構造的賃上げの実現について議論/新しい資本主義実現会議 ほか
【統計】1月の完全失業率2.4%、前月比0.1ポイント低下/労働力調査 ほか
【動向】正社員の人手不足は52.6%/民間調査
【企業】2024年春季交渉、賃上げ総額6.22%/すかいらーく ほか
【海外】公共部門等のストライキの動向―鉄道、医療部門などで紛争が長期化/イギリス ほか
【イベント】特別講演会「近代日本の鉱山史を振り返る」/大原記念労働科学研究所 ほか

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【JILPTからのお知らせ】
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☆アンケートのお願い

2月28日にメールで、メールマガジン「労働情報」についてのアンケートのお願いをお送りしています。
ご協力よろしくお願いいたします。

★「時間帯に着目したワーク・ライフ・バランス―家族生活と健康―」まだ間に合います!

 <第1部:研究報告> ※オンデマンド配信(3月2日土曜~6日水曜)
 「時間帯の視点からみた労働者の生活と健康、子どもへの影響」
 「就労世代の生活時間の貧困」
 「生活時間と健康の確保に関わる働き方」

 <第2部:パネル討論> ※ライブ配信(3月6日水曜 14時20分~16時30分)
   大石亜希子 千葉大学大学院教授
   中野円佳  東京大学 男女共同参画室 特任助教
   桂山奈緒子 認定NPO法人フローレンス マネージャー
   高見具広  JILPT主任研究員
   濱口桂一郎 JILPT研究所長
 https://www.jil.go.jp/event/ro_forum/20240306/index.html

★「キャリア形成に寄与する学び直し・リカレント教育」

 <第1部:研究報告> ※オンデマンド配信(3月16日土曜~19日火曜)
 「AIと共に働くための学び直しとは?」
 「産業人材ニーズと大学教育内容の関係の見える化の試み」

 <第2部:事例紹介・パネル討論> ※ライブ配信(3月19日火曜 13時50分~16時15分)
  ・職業訓練の実践の取組
   (高齢・障害・求職者雇用支援機構)
  ・リカレント教育の実践の取組
   (東京理科大学、愛媛大学)
 コーディネーター 堀有喜衣JILPT統括研究員
 https://www.jil.go.jp/event/ro_forum/20240319/index.html

☆『労働関係法規集2024年版』 現在予約受付中!
 3月18日(月曜)より順次発送予定です。

主要な労働関係法規を持ち運びに便利な分量・判型に収めたコンパクトサイズの法規集です。
2024年版では、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」を新たに収録するとともに、
「労働基準法施行規則」「有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準」「労働審判法」
「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律施行規則」の改正法令を収録しています。
【B6判変型1,191頁 定価:1,980円(本体1,800円) 3月15日刊行予定】
https://www.jil.go.jp/publication/ippan/houkishu.html

★国際セミナー(オンライン開催) 申込受付中!
「労働者協同組合法の活用による地域経済の活性化や地域課題の解決に向けて
 ~欧州のコーポラティブ制度や事例を踏まえて~」

経済開発協力機構(OECD)の協力を得て、国際的な実務家・専門家から、
協同組合についての歴史の長い欧州における労働者協同組合の位置づけや
活動の実態について報告をいただきます。
日時:3月12日火曜 18時00分~20時00分
https://www.jil.go.jp/foreign/event/ko_work/20240312gaiyou.html

◇『日本労働研究雑誌』2024年2・3月号を刊行しました!
 学会展望:労働経済学研究の現在―2021~23年の業績を通じて
 特集「モノを運ぶ仕事の労働問題」
https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2024/02-03/index.html

◇『ビジネス・レーバー・トレンド』2024年3月号を公開しました!
 技能をどう高め、いかに継承させるか――「現代の名工」からの言葉
https://www.jil.go.jp/kokunai/blt/backnumber/2024/03/index.html

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【行政】
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●持続的な構造的賃上げの実現について議論/新しい資本主義実現会議

政府は2月27日、「新しい資本主義実現会議」を開催し、物価上昇を上回る持続的な構造的賃上げの実現について
議論した。物価上昇を上回る賃上げが消費を後押しし、新たな投資を呼び込む「好循環を来年以降も続けていくため
には、春季労使交渉の議論に加え、労働生産性などの向上を通じた付加価値の拡大が不可欠」、「労働市場改革を
進め、能力ある若手や労働意欲のあるシニア層に、労働機会を提供できるようにするとともに、非ホワイトカラー
についても、ノウハウのある労働者が高い賃金を得られる構造を作り上げる」とした。企業側に、「人手不足の中で、
仕事をしたいシニア層に機会提供のため、役職定年・定年制の見直しなどを検討いただきたい」とした。
https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202402/27shihon.html

●今後3年間に雇用者を増やす見通しの企業は7割以上/内閣府調査

内閣府は2月29日、2023年度「企業行動に関するアンケート調査」結果を公表した。
今後3年間(2023~2025年度平均)に雇用者を増やす見通しの企業割合(全産業)は75.8%(前年度調査73.6%)、
製造業では73.8%(同68.8%)、非製造業では77.4%(同77.4%)。業種別では、非製造業は「倉庫・運輸関連業」
(100.0%)、「保険業」(100.0%)など、製造業では「精密機器」(89.5%)、「化学」(83.7%)などが高い。
次年度(2024年度)の実質経済成長率見通し(全産業・実数値平均)は1.3%(前年度調査1.3%)。
https://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/ank/menu_ank.html
▽概要
https://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/ank/r5ank/r5ank_houdou.pdf

●労災保険の介護(補償)給付等の最高限度額等の改定/労政審部会

労働政策審議会労働保険部会は2月28日、介護(補償)等給付・介護料の最高限度額・最低保障額の改定等の
省令案要綱について、妥当と答申した。介護(補償)等給付については、常時介護を要する場合の最高限度額
17万7,950円(改定前17万2,550円)、最低保障額8万1,290円(同7万7,890円)、随時介護の場合は、8万8,980円
(同8万6,280円)、4万600円(同3万8,900円)。また、労災等を受けた労働者の子弟に対する就学援護費も高校、中学について1,000円引き上げる。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_38093.html

●2024年度国土交通省土木工事・業務の積算基準等を改定/国交省

国土交通省は2月26日、直轄土木工事・業務に適用する積算基準等について、2024年度から適用する新基準等として、
働き方改革のための取組の加速や円滑な施工体制の確保など、現場実態を踏まえた各種改定を行うと発表した。
公共事業の働き方改革を推進するための環境整備に取り組むとしている。週休2日の「質の向上」の拡大(月単位の
週休2日推進等)、時間外労働規制の適用への対応等が含まれる。
https://www.mlit.go.jp/report/press/kanbo08_hh_001070.html

●「世界経済の潮流2023(II)」を公表/内閣府

内閣府は2月28日、「世界経済の潮流2023年(II):中国のバランスシート調整・世界的なサービス貿易の発展」を公表
した。第1章「2023年後半の世界経済の動向」では、アメリカ、ヨーロッパ、中国の景気動向や見通しについて、
分析し、リスク要因について整理。第2章「世界の貿易・投資構造の変化」では、世界貿易及び直接投資の構造変化、
今後の展望について解説。
https://www5.cao.go.jp/j-j/sekai_chouryuu/sa23-02/index-pdf.html
▽概要
https://www5.cao.go.jp/keizai3/2023/sekai223siryou.pdf

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【統計】
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●1月の完全失業率2.4%、前月比0.1ポイント低下/労働力調査

総務省は1日、2024年1月の「労働力調査(基本集計)」を公表した。完全失業率(季調値)は2.4%で、前月と比べ
0.1ポイント低下。完全失業者数は163万人(前年同月比1万人減)で、2カ月ぶりの減少。就業者数は6,714万人(同25万人増)
で18カ月連続の増加。雇用者数は6,076万人(42万人増)で、23カ月連続の増加。正規従業員数は3,603万人(同31万人増)で
3カ月連続の増加。非正規従業員数は2,146万人(同13万人増)で5カ月連続の増加。
▽1月結果
https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/index.html
▽1月概要
https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/pdf/gaiyou.pdf

●1月の有効求人倍率1.27倍、前月と同水準/一般職業紹介状況

厚生労働省は1日、2024年1月分「一般職業紹介状況」を公表した。有効求人倍率(季調値)は1.27倍で、前月と
同水準。新規求人倍率(同)は2.28倍で、前月と比べ0.03ポイント上昇。新規求人(原数値)は、前年同月比で3.0%減。
産業別では、増加したのは生活関連サービス業・娯楽業(5.7%増)、情報通信業(4.5%増)、学術研究,専門・
技術サービス業(4.1%増)などで、減少したのは製造業(11.6%減)、宿泊業・飲食サービス業(8.8%減)、
卸売業・小売業(5.8%減)など。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_38033.html
▽報道発表資料
https://www.mhlw.go.jp/content/11602000/001214450.pdf

●基調判断「改善を示している」で据え置き/12月景気動向指数の改訂状況

内閣府は2月28日、2023年12月の「景気動向指数・速報からの改訂状況」を公表した。
景気の現状を示す「一致指数」は、前月差1.3ポイント上昇の115.9(速報値は116.2)。
基調判断は、「景気動向指数(CI一致指数)は、改善を示している」で据え置き。
https://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/di/202312rsummary.pdf
▽統計表
https://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/di/di.html

●1月の鉱工業生産、「一進一退ながら弱含み」で基調判断を下方修正/鉱工業指数速報

経済産業省は2月29日、1月の鉱工業生産・出荷・在庫指数(速報)を公表した。
生産指数(季調値)は97.6(前月比7.5%低下)で2カ月ぶりの低下。業種別で低下したのは「自動車工業」
「汎用・業務用機械工業」「電気・情報通信機械工業」等。上昇は「輸送機械工業(自動車工業を除く)」。
出荷は96.2で前月比8.3%、在庫は1.8%のいずれも低下。在庫率は3.9%の上昇。
基調判断は、「総じてみれば、生産は一進一退ながら弱含んでいる」として下方修正。
https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result-1.html
▽概要
https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result/pdf/press/b2020_202401sj.pdf

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【動向】
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●正社員の人手不足は52.6%/民間調査

帝国データバンクは2月26日、「人手不足に対する企業の動向調査」結果を公表した。
2024年1月時点の、全業種の従業員の過不足状況について、正社員が「不足」の企業は52.6%。業種別では
「情報サービスが77.0%で最多。「2024年問題」が懸念されている建設、物流、医療業では、それぞれ約7割が
人手不足。非正社員の人手不足割合は 29.9%で、業種別では「飲食店」(72.2%)が最多。人手不足を感じる
企業では「2024年度における正社員の賃上げ実施見込み」は65.9%で、人手が「適正」(55.7%)、「過剰」(51.6%)
な企業に比べ、賃上げに積極的である傾向が見られるとしている。
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p240209.pdf

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【企業】
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●2024年春季交渉、賃上げ総額6.22%/すかいらーく

すかいらーくホールディングスは2月26日、2024年春季交渉の初回に満額回答で合意したと発表した。
4月から基本給を一律で引き上げるベースアップ5%(1万7,400円)と定期昇給を合わせて平均約6.22%
(2万1,333円)の賃上げ。また、今春入社の正社員の初任給は1万7,400円増の、24万5,800円とする。
対象者は、すかいらーくホールディングス、すかいらーくレストランツ正社員の約4,200名。賃上げ理由は、
物価高騰の中での従業員の生活水準の向上、賃上げによる経済の好循環、人的資本投資の積極化、としている。
https://corp.skylark.co.jp/Portals/0/images/news/press_release/2024/20240226_release.pdf

●国内外で約2,000人削減/オムロン

オムロンは2月26日、同社グループ全体での企業価値向上に向けた収益力と成長力の改善を目的とした
「構造改革プログラム『NEXT 2025』」を発表した。その中で、国内約1,000名、海外約1,000名の
合計約2,000名を削減し、総人件費の適正化に取り組むとした。
https://www.omron.com/jp/ja/news/2024/02/c0226.html

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【海外】
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●国別労働トピック/JILPT

<イギリス>
▽公共部門等のストライキの動向―鉄道、医療部門などで紛争が長期化

急激な物価上昇に伴う実質賃金の減少から、2022年以降、広範な業種で賃上げなどを求める労働争議が生じ、
鉄道や医療などの公共部門等でのストライキが国民生活に広く影響を及ぼす状況が断続的に続いている。(JILPT調査部)
https://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2024/02/uk_01.html

<中国>
▽高齢化社会への対応を強化、シルバー経済に新たな活路

国家統計局の最新データによれば、2023年末の60歳以上人口は2億9,697万人で、総人口の21.1%を占め、うち
65歳以上(2億1676万人)は15.4%に達していた。予測では、60歳以上人口は2035年時点で4億を超え(総人口の30%超)、
深刻な高齢化段階に入るとされる。しかし、高齢化社会の急速な進展が直面する様々な課題は、同時に新たな
チャンスを生み出す可能性にもつながる。中国政府は、巨額の高齢者向け消費市場の誕生を見据え、「シルバー経済
(銀髪経済)」の活性化に重点を置き始めている。(JILPT調査部)
https://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2024/02/china_01.html

▽若年失業率の発表を再開―従来の算出方法を見直し

国家統計局は1月17日、2023年12月の失業統計を発表した。「統計の改善と最適化」のため停止していた全国都市部に
おける16~24歳の若年失業率について、従来の算出方法を見直したうえで発表を再開。全体の失業率は5.1%だった
のに対して、16~24歳では14.9%となっている。また、「雇用と失業の全体像をより完全に反映させるため」として、
これまで25~59歳でひとくくりにしていた失業率を、25~29歳と30~59歳に二分割して発表している。(JILPT調査部)
https://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2024/02/china_02.html

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【イベント】
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●特別講演会「近代日本の鉱山史を振り返る」/大原記念労働科学研究所

大原記念労働科学研究所は3月22日(金)、春の維持会サロン特別講演会「近代日本の鉱山史を振り返る」を
新宿区で開催する。鉱山は近代の人々の働き方、生き方と密接に関わり、その地域の魅力、文化を育んできた。
鉱山の歴史を通じ近代日本のあゆみをひも解く。会員以外も参加可。参加無料、要事前申込。
https://www.isl.or.jp/service/seminar/post_14.php

●2023年度「冲永賞」の授賞図書・論文を発表/労働問題リサーチセンター

労働問題の図書・論文を対象とする2023年度の「第38回冲永賞」(公財・労働問題リサーチセンター主催)の
授賞図書に、朴孝淑氏(神奈川大学法学部准教授)の『賃金の不利益変更―日韓の比較法的研究』と、梅崎修氏
(法政大学キャリアデザイン学部教授)・南雲智映氏(東海学園大学経営学部教授)・島西智輝氏(立教大学
経済学部教授)の『日本的雇用システムをつくる1945-1995―オーラルヒストリーによる接近』が選ばれた。
https://www.rodorc.or.jp/recognize