役職定年者の自己調整が職務パフォーマンスに与える影響

要約

近藤 英明(法政大学大学院博士後期課程)

石山 恒貴(法政大学教授)

本研究の目的は,役職定年者がどのような自己調整を行い新たな役割に適応するのかを明らかにし,さらに,その自己調整の多様な側面が職務パフォーマンスに与える影響を検証することである。役職定年制は,管理職のポスト削減や人件費抑制を目的として導入されたが,役職喪失や給与減額により意欲低下を招きやすい。制度の設計や運用を検討するには,制度の機能だけでなく,役職定年者の意識や行動といったミクロ的側面を解明する必要がある。先行研究では質的に多様な自己調整のあり方が報告されているが,定量的検証は行われていない。本研究では,役職定年者の自己調整を「新たな学びへの挑戦」「現役・後進への支援」「周囲との関係性の縮小」「仕事の進め方の自己裁量化」の4次元として尺度化し,職務パフォーマンスとの関係をフルSEMで分析した。従業員300人以上の組織に勤務する55歳から59歳の役職定年者213名を対象にWeb調査を実施した結果,「現役・後進への支援」は課題パフォーマンスと文脈的パフォーマンスの双方に正の影響を与え,「周囲との関係性の縮小」は文脈的パフォーマンスに負の影響を与えた。本研究は,役職定年者の自己調整を多面的な構成概念として定量的に実証し,そのうち支援的行動が組織成果に寄与することを明らかにした点に理論的・実践的意義がある。さらに,役職定年者の活性化を通じて,制度を「雇用確保」から「知識と経験の活用」へ転換する方向性を示し,持続可能な高年齢期雇用政策の構築に示唆を与える。


2026年特別号(No.787) 自由論題セッション●第4分科会

2026年1月26日 掲載