中小企業における労働組合のパラドクス─大切なのに「見えない」存在
要約
日本では労働者の約7割が中小企業で働いているため,中小企業労働者の待遇改善が極めて重要である。ところが,中小企業は大企業に比べて,労働条件や労働環境に恵まれず,また法規制への対応も不十分になりやすいことがわかっている。そこで,中小企業における待遇改善の推進者として労働組合に着目した。具体的には,中小企業における,①労働者の労働組合への加入,②労働組合の影響,③労働組合の必要性の認識について,連合総研「勤労者短観調査(勤労者の仕事と暮らしに関するアンケート調査)」のデータと産業別労働組合のオルガナイザーへの聞き取りなどをもとに考察した。その結果,中小企業では大企業よりも,労働組合の影響力が大きいにもかかわらず,労働者の組合加入率が低いだけでなく,労働組合を必要だと考える割合も低いという逆説的な状況が判明した。また,労働組合は働き方改革などの法政策を職場で積極推進していることが明らかになった。これは労働組合が,労働条件の改善のような直接効果とは別に間接効果をもつ可能性を示唆する。一方で,政策主導・経営主導の取り組みが拡大するにしたがい,労働者の労働組合の必要性への認識は曖昧にもなっていた。かつて個別労使で調整していた事項を法政策で規律するようになるなかで,本研究の発見は,職場レベルでの法政策と労働組合の相乗効果や,それにともなう労働組合の「見えなさ」の問題について,新たな研究視角を提供し,政策対応の必要性を含意する。
2026年9月号(No.794) 特集●中小企業を捉え直す
2026年8月25日 掲載


