中小企業の人事制度とインクルーシブで幸せな働き方─女性活躍推進の変化に着目して
要約
中小企業は,大企業に比べて人事制度が未整備であるとされてきた。一方で,先行研究では,人事制度が未整備な中小企業の方が女性活躍推進が進んでいる場合もあることも指摘されていた。本稿では,中小企業の人事制度が,インクルーシブな職場づくりや女性たちの幸せな働き方にどのように関わるのかを,中企業と小企業を区別しながら検討する。研究方法は,女性活躍に関係する関連文献の整理と,筆者による過去の中小企業の女性活躍推進に関わる実態調査の再分析による。分析の結果,規模の小さい企業では,明文化された制度が十分に整備されていなくても,従業員の個別事情に応じた柔軟な対応が生み出されやすいことが確認された。一方で,小規模企業であっても,一定の人事制度が存在することは,女性の就業継続を支えるうえで重要である。ただし,女性が制度の受け手にとどまる場合には,より本格的な女性活躍推進にはつながりにくい。本稿は,人事制度を,従業員の行動を外部から規定するインセンティブ構造としてのみとらえるのではなく,その形成・運用への参加を通じて,人々が他者との関係性の中で意味を生成し,主体性を形成するプロセスとして理解する必要があることを示す。この視点から,中小企業の人事制度をとらえる新たなパラダイムを提案する。
2026年9月号(No.794) 特集●中小企業を捉え直す
2026年8月25日 掲載


