中小企業のガバナンスと雇用慣行─同族企業と非同族企業の比較分析
要約
本論文では,中小企業における労使関係および雇用慣行について,中小企業のガバナンス,とりわけ同族企業に着目して分析を行った。具体的には,4つの仮説を設定し,その検証を行った。第1に,同族企業では,非同族企業と比較して,労働組合や発言型従業員代表の形成状況に差異がみられる。第2に,同族企業と非同族企業では経営者の労使コミュニケーション意識や職場の雰囲気に対する経営者の認識,経営情報の従業員への共有の程度に差がある。第3に,同じ中小企業でも同族企業と非同族企業では労務管理に関して直面している課題が異なる。第4に,同族企業と非同族企業では労使関係や労働問題を相談する相手が異なる。その結果,以下のことが示された。第1に,同族企業は労働組合や発言型従業員組織が形成されにくい。第2に,同族企業では経営情報の従業員への共有がなされない傾向があるが,労使コミュニケーションや職場の雰囲気に対する認識には同族企業と非同族企業で有意な差は見られない。第3に,同族企業では従業員の高齢化については課題が少ないとするものの,従業員の定着や賃金の高さの問題に直面する。第4に,同族企業の経営者は労使関係や労働条件を相談する相手として経営者団体,民間コンサルタント,社労士や税理士を選ぶ傾向がある。
2026年9月号(No.794) 特集●中小企業を捉え直す
2026年8月25日 掲載


