中小企業における持続可能な経営と事業承継─株式会社ロマンライフのケースを中心に
要約
本稿では,中小企業の持続可能な経営を実現する1つの方策としての事業承継をテーマに,世界における中小企業の事業承継にかんする議論を整理することで,承継計画,事業承継のプロセス,事業承継の意欲形成プロセス,といった論点を導出し,それを手がかりとしながら,株式会社ロマンライフにおける事業承継のケースと照合させ,検討した。そしてロマンライフにおける事業承継のケースから,承継計画については,先行研究では抽象的にすぎなかった諸点を,具体的な年齢,役職,さらには幹部候補者名という形に落とし込んでいること,事業承継のプロセスについては,2013年の事業承継の宣言から2023年の社長交代,さらに事業承継後における役職呼称の廃止など具体的な組織づくりまでを,時系列でとらえることができること,さらに事業承継の意欲形成プロセスについては,後継者の事業承継の意欲はロマンライフにおける10年承継カレンダーのような計画的ツールだけでなく,先代および後継者との間での感情的および対話的なプロセスによって補完されること,を明らかにした。さらに,先行研究では触れられなかった点として,ロマンライフでは大家族主義や「青春ができる会社」といった独自の経営哲学を指摘し,組織全体の心理的安全性や社員の幸福追求という,従業員のウェルビーイングの追求が,事業承継を円滑に進めていくうえで重要であることを明らかにした。
2026年9月号(No.794) 特集●中小企業を捉え直す
2026年8月25日 掲載


