リモートワーカーを福利厚生でどう支援するか
要約
新型コロナウイルス感染症の流行を契機にリモートワークという働き方が,企業と従業員のそれぞれに選択肢として広く認知されるようになった。本稿では,リモートワーク下における福利厚生のあり方について検討している。先行研究では,リモートワークは従業員に柔軟性や自律性をもたらす一方で,孤立感や過重労働といったリスクも伴うことが指摘されている。これらの両面的な影響に対して,福利厚生が果たしうる支援の可能性を,福利厚生が従業員に及ぼす効果に注目した学術研究,日本の就業者を対象にした実態調査の両側面から検討した。学術研究からは,従業員が福利厚生制度に対してもつ「認知」「導入」「活用」を考慮する必要性が確認された。実態調査ではこの3側面に注目し,リモートワークを実施する割合,および,リモートワークを所属企業が推進している程度との関連を分析し,以下の点を確認した。第1に,企業がリモートワークを推奨している場合,その他の福利厚生制度の導入も盛んであった。第2に,リモートワーク環境下では,所属先の福利厚生制度の理解度が下がる傾向が示唆された。第3に,リモートワークを行う従業員に対して,ニーズを満たせている制度と,積極的に活用されている制度が確認された。一方で,導入の遅れが懸念される制度も確認された。確認された実態を踏まえ,リモートワークを進めるうえで,福利厚生の整備による従業員支援の必要性が確認された。
2025年7月号(No.780) 特集●福利厚生の意義を問い直す
2025年6月25日 掲載