トラック運送業におけるドライバー不足問題の現状と今後の対応

要約

矢野 裕児(流通経済大学教授)

物流は,2017年頃から,物流危機,宅配危機ということが言われ始めた。物流需要が増大するのに対して,ドライバー不足などにより物流の輸送能力が不足するというものである。中長期的にドライバーが減少していくなかで,荷物を運ぼうとしても運べない,あるいは遅延するという事態が発生するというものである。本稿では,物流およびトラック運送業がどのような構造なのか,物流需要がどのように推移してきたのか,トラック運送業の事業者数の推移,中小企業比率が高く,多重下請構造であるといった面から説明する。続いてトラック運送業におけるドライバー不足の現状として,就業人口,自動車運転従事者数がどのように推移してきたのか,さらに求職者が特に高齢化している状況について説明する。トラック運送業におけるドライバー不足の背景として,長い労働時間,年間収入が安いことが指摘されており,その現状について説明する。そして,ドライバー不足への対応として,適正な運賃確保対応として標準的な運賃制度,労働時間短縮向けての荷待ち時間,荷役時間削減の対応について説明する。最後に,ドライバー不足,物流危機への対応は,物流事業者だけでは解決できないのであり,発荷主,着荷主企業と連携し,輸送のロット,頻度,リードタイムなどの物流条件の見直しが欠かせないことを指摘する。


2024年2・3月号(No.764) 特集●モノを運ぶ仕事の労働問題

2024年2月26日 掲載