論文要旨 正社員のキャリア志向とキャリア
─多様化の現状と正社員区分の多様化

佐野 嘉秀(法政大学経営学部教授)

本稿では、特集テーマである「正社員の多元化」に関連して、正社員における今後のキャリアに関する希望をキャリア志向という概念でとらえ、正社員のキャリア志向の多様性と、それに対応したキャリアと働き方の現状、そうした現状に対する正社員自身の評価を分析した。分析から、(1)正社員のキャリア志向が多様化していること、(2)管理職志向で管理職昇進とそれに向けた仕事高度化の機会が充実し、専門職志向で専門・技術職の割合が高いなど、キャリア志向に対応したキャリアの多様化が見られること、(3)こうしたなか、男性正社員では管理職志向と専門職志向で就業満足度が高い一方、キャリア志向によらず長い傾向にある労働時間を背景に、家庭生活等を重視する生活重視志向でとくに就業満足度が低いこと、他方で、女性正社員では、キャリア志向に対応した労働時間の相違も見られ、キャリア志向によらず満足度は同様に高いことが確認できた。このような分析結果を踏まえ、同一の正社員区分内における仕事の割り振り等の個別的管理を通じたキャリアや働き方の多様化との比較から、複数の正社員の雇用区分を設けること(正社員区分の多様化)の意義について検討している。

2015年特別号(No.655) メインテーマセッション●正社員の多元化をめぐる課題

2015年1月26日 掲載