論文要旨 60歳代前半層(正社員・継続雇用者)に対する管理職の評価行動の特質と課題─「現役(59歳)正社員」との比較を通して

大木 栄一(玉川大学経営学部教授)

鹿生 治行(高齢・障害・求職者雇用支援機構雇用推進・研究部研究開発課専門役)

藤波 美帆(千葉経済大学経済学部専任講師)

本報告では、発表者が参加した高齢・障害・求職者雇用支援機構(2013)『「高齢者の部下がいる管理職の評価行動と高齢者活用の管理職への支援」に関する調査研究報告書』の60歳代前半層(「正社員」及び「継続雇用者」で、以下、「高齢社員」と呼ぶ。)を部下に持つ管理職を対象にしたアンケート結果の再分析を通して、「現役(59歳以下)正社員」と高齢社員を比較しながら、どのような評価の尺度(ルール)がそれぞれの社員に適用されているのか、さらに、「評価の中核的な装置」としての「目標管理」について、それぞれの社員に対し、どのように運用されているのか、を明らかにした。分析結果によれば、第1に、評価の尺度(ルール)についてみると、「能力」が3割、「仕事内容」「個人の業績・成果」「執務態度」がそれぞれ2割、「属人的要素」が1割の構成になっており、管理職は高齢社員の部下と現役正社員の部下を同じような尺度(ルール)で評価している。第2に、仕事を進める上で、高齢社員の部下に「業務目標を立てさせている」管理職は6割強であり、現役正社員の部下の8割強と比べると、目標管理は広く定着している状況ではない。第3に、「部下に期待する役割を伝えている」管理職は、高齢社員では6割強であり、現役正社員の7割強と比較して低くなっており、管理職は期待している仕事の量と質(発注内容)を高齢社員に明確に提示することが十分にできているわけではない。また、人事評価のために高齢正社員との面接を実施している管理職は約7割であり、現役正社員の約8割と比べると、低くなっている。今後、管理職が高齢社員の活用を進めていくためには、部下に一方的に仕事の指示をだすのではなく、部下と相談し、部下が自らの能力を活かす方法を考えて、仕事を進めてもらうことが必要である。

2015年特別号(No.655) 自由論題セッション●第4分科会(働き方、職場管理)

2015年1月26日 掲載