論文要旨 限定正社員の実態─企業規模別における賃金、満足度の違い

戸田 淳仁(リクルートワークス研究所研究員)

本研究では、政府が限定正社員をさらに普及させようとしている中で、限定正社員の実態を把握するべく、企業規模の差に注目しながら考察した。企業規模により限定正社員の活用が異なる可能性があり、その点を考慮した分析を行った。その結果、女性については子供が小さく育児や子育てが必要な人ほど、労働時間限定の正社員として働いている傾向が見られ、多様な働き方に対応するためには限定正社員が貢献している可能性が高いといえる。また、賃金に関する分析では、性別で結果はやや異なるが、勤務地限定や労働時間限定によりペナルティが発生する。勤務地限定によるペナルティは大企業において見られるのみであり、労働時間限定のペナルティは、女性のしかも企業規模全体の分析で有意な結果が得られた。職域限定については、賃金に対するプレミアムやペナルティは見られないが、満足度において中小企業を中心に職域が限定されていることにより満足度が高まることが分かった。大企業では複数の事業所のある企業が多いことから、転勤や異動を行うことを常としており、そのため特に転勤を伴わない働き方については賃金を下げることにより対応することが示唆されるが、中小企業では転勤の可能性があまりないため賃金に対するプレミアムやペナルティが見られない。また中小企業では、より少ない人員で事業を運営する必要があり一人あたりの職域が広いため、職域が限定されることにより、特定の仕事に対して集中できることにより満足度が高まると推察される。

2015年特別号(No.655) 自由論題セッション●第4分科会(働き方、職場管理)

2015年1月26日 掲載