論文要旨 経営のグローバル化と労使関係
─フォルクスワーゲン社の事例を手がかりに

首藤 若菜(立教大学経済学部准教授)

グローバル化の進展に伴い、労働組合の国際連帯の強化が叫ばれて久しいが、日本の多くの労組は、未だ一国的な活動にとどまっている。だが海外に目を向ければ、欧州を中心に、国境を超えた労組間のつながりを強め、国際的な労使関係の構築を模索する動きがみられる。例えば、2000年以降、多国籍企業と国際産別組織の間で国際枠組み協定(Global Framework Agreements)の締結が広がってきた。この協定締結を契機に、本国の労組や本社の従業員代表委員会が、在外事業所の労組と連携し、企業単位の国際ネットワークを形成しつつある。本稿では、その先進事例であるフォルクスワーゲン社の従業員代表委員会および金属産業労組(IGメタル)の取り組みを紹介する。同社は、世界に約100の工場を保有するが、そのほとんどが現地労組により組織されている。本国の産別労組は、在外工場の組織化を支援し、労組結成後にはその育成に力を注いできた。従業員代表委員会は、各工場の労組を毎年招集し、職場の課題を共有するとともに、国際的なルール作りに取り組み始めている。本稿では、この事例をもとに、グローバル化に対応した労使関係のあり方を検討する。

2015年特別号(No.655) 自由論題セッション●第3分科会(職場とキャリア形成)

2015年1月26日 掲載