論文要旨 若年者就業率における賃金弾力性の推定
この研究では、若年者の就業・非就業を決定する労働供給のエクステンシブ・マージンの賃金弾力性を、日本のデータを用いて推定した。
日本において、2000年代前半期には、失業者の動向とその対策のみならず、就職活動に至らない若年独身の無業者にも注目が集まった。従来、非労働力者は、専業主婦や高齢者がほとんどを占めると考えられてきたが、1990年代以降の不況期を通じて若年独身の無業者が急増した。若年期の就業には技能形成の側面があり、若年無業者の増加は将来の低技能労働者の増加を招くことが懸念されている。このような就業率の低下に対して、労働所得税などの減税を通じて手取り賃金率の上昇を促すことでどれだけ就業確率を高めることができるのかを示すパラメータすなわち賃金弾性値を得ることが本稿の目的である。
この研究では、就業・非就業を示す就業ダミー変数を被説明変数とし、時間当たり賃金率、非労働所得、その他の若年者の属性を説明変数とした静学的労働供給関数を推定した。その際、就業若年者の意思決定は、若年者個人のみによるものでなく、若年者の属する世帯内資源配分の結果によるものと考え、非労働所得に対する除外操作変数として父親と母親両方の教育水準を用いた。
以上の結果から得られたエクステンシブ・マージンの弾力性の推定値は0.06である。また、男女別では、女性のほうが、学歴別では、低学歴者ほど賃金弾力性が高いという結果が得られた。
2015年特別号(No.655) 自由論題セッション●第2分科会(労働市場、賃金)
2015年1月26日 掲載