論文要旨 プロフェッショナルは自身の専門能力についてどれほど汎用性があると感じているのか?

西村 健(京都大学大学院経済学研究科博士後期課程)

企業外部機関が付与する公的資格や同業者による承認にはスキルを客観的に評価する機能があるため、企業横断的なジョブラダーと職業別労働市場の形成を促す効果があると言われる。このことは国家資格が義務付けられる医療プロフェッショナルでは職業別労働市場が形成されやすく、義務付けがない企業内プロフェッショナルでは逆に形成されにくい可能性を示唆する。

しかし、企業内OJTで獲得されるスキルは従来の人的資本論が考えるほど企業特殊性を帯びないと指摘される。企業内プロフェッショナルでも、自分のスキルに汎用性を感じる人が多ければ、転職市場の整備次第で職業別労働市場の形成が促されるかもしれない。

本稿はスキルの汎用性意識と転職志向が職種によってどのように異なるのかについて、医師、薬剤師、看護師、研究開発人材、情報処理技術者に着目し分析した。分析に使用したデータはリクルートワークス研究所による『ワーキングパーソン調査2010』の個票である。分析の結果、医療プロフェッショナルの方が企業内プロフェッショナルに比べて汎用性を感じる傾向が強い事、勤続年数が長いほど、正社員ほど医療プロフェッショナルでは汎用性があると回答し、企業内プロフェッショナルでは逆に汎用性がないと感じる事、医療プロフェッショナルの中でも仕事の段階によって汎用性の感じ方に違いがある事、スキル汎用性を感じても転職志向は促進されない事などが明らかとなった。

2015年特別号(No.655) 自由論題セッション●第2分科会(労働市場、賃金)

2015年1月26日 掲載