論文要旨 母子自立支援員から見た母子家庭の母の経済的自立

田中 恵子(法政大学大学院キャリアデザイン学研究科研究生終了)

母子家庭の母の経済的自立に関して、母子自立支援員の視点を通し観察されたデータから、経済的に「自立している人」と「自立していない人」を比較し両者の相違点や特徴を考察した。比較内容は(1)母の属性、(2)相談時期・相談内容・自立に至るまでの期間、(3)具体的な就業支援策・取得資格の状況、(4)自立への阻害要因、(5)母と面談をして感じる行動面(態度)の特徴である。

その結果、経済的自立と母の行動面や能力面での特徴に大きな差が見られた。

経済的に「自立している人」の行動面での特徴は「家族以外のネットワークがある」「物事をはっきり言う」「一つの仕事を長く経験している」「身だしなみが整っている」「職業資格がある」「車の免許を持っている」であった。一定の社交能力と社会的な信頼関係の構築力・維持能力が背景にあることを示しており、信頼できる友人・知人などの情報入手経路があることを物語っている。そして、自分なりの考えを持ち、自分の気持ちを明確に意思表示できること、職務経験を通して協調性や自律性を身につけている人が想定される。つまり、経済的な自立化を促進するには、これらの社会的能力をどのようにすれば身につけることができるのかを最優先に検討すべきで、短期の職業訓練で資格を取得することに尽力するよりも、職業能力開発以前の基礎的な能力が取得できるプログラムの開発が必要である。

2015年特別号(No.655) 自由論題セッション●第1分科会(労働政策、ワークルール)

2015年1月26日 掲載