特集趣旨「この学問の生成と発展」

日本労働研究雑誌では、毎年4月号にユニークな特集を組んでいる。第一線の研究者にコンパクトな解説をお願いし、多くのトピックを紹介している。

本年4月号は、「この学問の生成と発展」と題した。労働研究の専門誌である本誌では、50年以上の長きにわたって、経済学、人的資源管理論、社会学、法律学、心理学、労使関係論などの各分野の第一線の研究者が、その時々のトピックを論じてきた。

「労働」を研究対象とする場合、上記のようなさまざまなアプローチの方法(学問分野)がある。また経済学の分野であっても、人事経済学やサーチ理論などのように、次第に経済学の中の個別分野として確立してきているものもある。そこで編集委員会は、大括りの各学問分野をさらに細分化し、それら各分野の代表的な研究者に、その分野の「生成と発展」を紹介していただくことにした。「労働経済」「社会政策・労使関係・人事管理」「教育・心理」「労働法」の4分野をさらに細分化し、総計19本の論考として連ねた。

このような特集は、本誌にのみ可能な作業であろう。それは何より、本誌が「労働」を対象としているからである。「労働」とは、「人が働く」ということである。働く前の教育は労働者となるために重要である。人が働く場所である企業や組織の構造や機能も重要である。また「政府・企業・家計(労働者)」という経済活動の各アクターの相互関係を見ることも重要である。さらに、労働者を取り巻くさまざまな法制度・政策も、企業及び労働者の行動と切り離して論じることができない。そして、「労働」の主体が機械ではなく人間である以上、様々な「感情」を持ち合わせている。

1人の研究者が、さまざまな分野の研究成果を取り入れて研究することは難しい。しかし、研究対象を取り巻く別のアプローチの研究成果に関心を持つことで、対象の別の側面を知り、より深い研究が可能となるのではないだろうか。

本特集が、他の労働研究分野に対する関心を惹起する契機となれば、幸いである。

印刷用(PDF:179KB)

2012年3月26日 掲載

GET Adobe Acrobat Reader新しいウィンドウ PDF形式のファイルをご覧になるためにはAdobe Acrobat Readerが必要です。バナーのリンク先から最新版をダウンロードしてご利用ください(無償)。