特集趣旨「あの議論はどこへいった」

2011年4月号(No.609)

あの議論はどこへいった─。今回の特集では、過去において研究の蓄積があったテーマについての議論を振り返り、その現在的意義についてあらためて考えてみたい。社会科学の研究は、変化してやまない時代の要請を見つめて、実態の把握や理論的な検討を進めてきた。社会の変化と人々の関心の在処を敏感に把握し、新しい概念でその核心をとらえてきた。そうした概念を中心に複数の研究者が研究を行い、ときに白熱した議論を生みだす。労働研究の分野も例外ではない。このような研究のあり方は、その時々の社会的要請に対応した研究のすばやい蓄積をもたらしてきた。しかし他方で、論点への人々の関心が薄れると、特別な取りまとめのないまま研究が途絶え、議論が終息することにもつながる。後から振り返ると、あの議論はどこへいったかと思う。あるいは、ほとんど振り返られなくなる。しかし、使われる概念はちがっていても、そうした議論と研究の蓄積のなかには、現在の研究にとって有意義な発想や視点、理論、事実発見に満ちたものが少なくない。今につながる社会の変化をとらえた研究もあろう。

そこで、本特集では、過去に研究の蓄積があった議論のいくつかについて、中心的な概念を取り上げ、議論を整理し、現在的な意義について自由に論じて頂いた。内容を踏まえて、1.雇用・就業と労働市場、2.技術・技能と労働生活、3.賃金・福利厚生と働き方、4.コーポレイトガバナンスと労使関係、の4つの領域に分けて掲載している。取り上げた概念はもとより網羅的ではない。他の議論も含めて、あの議論はどこへいったと、様々な研究の蓄積を振り返るきっかけとなることを期待したい。

印刷用(PDF:201KB)

2011年3月25日 掲載

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