ディスカッションペーパー 21-05
イギリス労働法政策の現代的展開
Taylor Reviewの概要と同報告書による勧告の具体的内容

2021年3月22日

概要

研究の目的

本研究は、労働に係る諸課題につき一定の対応策を示したイギリスのTaylor Review(2017年7月)を対象とするものである。Taylor Reviewは、当時のイギリス首相Mayの要請に基づき策定され、イギリス政府に対する勧告を相当数伴うものだった。そのほとんどが同政府により受け入れられたため、同国の現在の労働法政策の淵源のひとつがTaylor Reviewといえる。本研究は、Taylor Reviewの背景につき論じ、同報告書の概要と労働法政策に係る勧告につき紹介することを、主な目的とする。

研究の方法

文献サーベイ 研究会開催

主な事実発見

上記の目的のもと、本研究は、① プラットフォームを介した新しい働き方の登場、② 脆弱な立場の就労者の増加、③ 雇用上の法的地位と税制といった諸課題を主な背景としたものとしてTaylor Reviewを位置付けた。Taylor Reviewによる勧告は、雇用上の法的地位に関するものや派遣労働に関するものなど多岐にわたる。それらの中には、一定の評価がなされたものもあるが、基本的に研究者からの評価は高いものではない。

とはいえ、Taylor Reviewには、法政策との関係で評価すべき点が複数ある。それは、雇用に関わる者たちへの「わかりやすさ」を重視しようとしている点、現実を把握しようと努め一定の解を導出しようと試みている点、明快かつ効果的に法政策の内容を伝え得るgood workとの語を用いている点の3つである。ただ、いずれも、場合によってはマイナスに作用する可能性もある。また、既存のアプローチを維持することを基本的な態度としていること、各勧告とgood workとの関係が必ずしも明らかでない場合がみられること、プラットフォームを介した労働についての検討がUber型に偏っていることなど、Taylor Reviewには一定の限界もみられる。

政策的インプリケーション

上記の事実発見で述べたように、Taylor Reviewには、法政策との関係で評価すべき点が複数ある。すなわち、雇用に関わる者たちへの「わかりやすさ」を重視しようとしている点、現実を把握しようと努め一定の解を導出しようと試みている点、明快かつ効果的に法政策の内容を伝え得るgood workとの語を用いている点の3つは、参酌に値するであろう。

政策への貢献

厚生労働省をはじめ、各種政府会議で資料として活用されることが期待される。

本文

研究の区分

プロジェクト研究「労使関係を中心とした労働条件決定システムに関する研究
サブテーマ「雇用社会の変化に対応する労働法政策に関する研究」

研究期間

令和2年度

研究担当者

滝原 啓允
研究員

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内容について
研究調整部 研究調整課 お問合せフォーム新しいウィンドウ

※本論文は、執筆者個人の責任で発表するものであり、労働政策研究・研修機構としての見解を示すものではありません。

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