2004年 学界展望
労働調査研究の現在─2001~2003年の業績を通じて(4ページ目)


おわりに

小杉

本日は、お忙しいところありがとうございました。今日の議論のすべてをまとめることはできませんが、今後への労働調査の展望にかかわる点について整理して終わりたいと思います。

多様な働き方に関連しては、多様性を分析する視点は出てきていますが、その雇用管理上の問題、例えば、配置やキャリアをどう設計するかについてはまだ研究は進んでいないと思われます。また、パートタイム雇用については比較的多くの調査の積み重ねが見られましたが、若年者に広がるアルバイトという雇用形態での就業の実態は明らかになっていない部分が多いですし、請負業、短時間正社員の問題もこれからでしょう。働き方の多様化が進んでいるのに対して、調査のほうはまだこれからの面が多いのではないでしょうか。

多様なキャリアに関連しては、若年者の側の意識変化や職業への移行プロセスの変化については蓄積されてきていますが、非典型雇用からのキャリア形成をどう可能にするかという視点や、労働力需要サイドからの研究が手薄ではないかと思われます。また、中高年の企業を超えたキャリア形成のためには人材サービスの実態や問題点についての研究がこれから重要になるのではないかと思われます。

また、新しい産業分野では、必要な人材の育成プロセスや適正な処遇の問題など、問題はたくさん出てくるのではないかと思われます。

今後の労働調査研究は、教育との接点、カウンセリングなどの心理的アプローチとの接点、など幅広いかかわりを持ちながら進められる必要があるのではないでしょうか。

(この座談会は2003年12月26日に行われた)