2004年 学界展望
労働調査研究の現在─2001~2003年の業績を通じて

学界展望とは、第一線で活躍中の研究者による座談会形式で、学界の主要業績を振り返るとともに、今後の研究動向を展望しようとする「日本労働研究雑誌」2・3月号恒例の特集企画です。

日本労働研究雑誌 2004年2・3月号(No.524) 掲載 2006年9月 Web公開 全文印刷用


目次

出席者紹介 , はじめに

  1. Ⅰ 多様な働き方
  2. Ⅱ 多様なキャリア
  3. Ⅲ 新規分野の産業動向
  4. おわりに

出席者紹介

佐野 嘉秀(さの・よしひで)東京大学助手

東京大学社会科学研究所助手。最近の主な論文に「パート労働の職域と労使関係:百貨店の事例」仁田道夫編『労使関係の新世紀』(日本労働研究機構、2002年)など。産業社会学専攻。

佐野 哲(さの・てつ)法政大学助教授

法政大学経営学部助教授。最近の主な著作に『国際化する日本の労働市場』(共著、東洋経済新報社、2003年)など。経営社会学・労働市場論専攻。

小杉 礼子(こすぎ・れいこ)労働政策研究・研修機構 副統括研究員

労働政策研究・研修機構副統括研究員。最近の主な著作に『フリーターという生き方』(勁草書房、2003年)など。教育社会学・進路指導論専攻。


はじめに

小杉

本日はお忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございます。この学界展望は本誌恒例の企画ということで、最近3年程度の労働調査研究の蓄積を吟味して、今後の調査研究の方向性を探ろうという座談会です。今回は2001年から2003年の期間に発表された調査報告書を対象にレビューして、十分周知されていない調査も掘り起こしたいと思います。テーマは大きく三つ、多様な働き方、多様なキャリア、そして、新しい産業分野の労働問題に絞って議論したいと思います。

まず多様な働き方をめぐる調査研究ですが、第1に、多様な働き方を可能にする環境条件としての雇用のあり方やシステムを問題にするアプローチ、第2に、さまざまな働き方の実態と問題点を明らかにしようというアプローチ、第3にその仲介である人材サービスのあり方に迫るアプローチに整理できるでしょう。

では、最初に佐野哲さんから、雇用のあり方やシステムを議論した研究を紹介して下さい。

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