本人以外による代替が可能なプラットフォーム労働の従事者は労働者ではない
 ―最高裁判決

カテゴリー:労働法・働くルール

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  • 国別労働トピック:2023年12月

最高裁判所は11月、プラットフォームを通じた料理配送サービスを行うデリバルー社の配達員について、労働者ではないとする判決を下した。配達員の団体交渉権をめぐる行政機関の判断を不服として、労働組合が行政審査の申し立てを行っていた件に関するもので、判決は、同社と配達員の契約が本人以外による配達の自由を認めている点などを重視、両者の間に雇用関係があるとはいえず、このため団体交渉に関する権利保護も適用されない、との判断を示した。

判決の経緯と概要

申し立ては、飲食店の料理の配送サービスを提供するルー・フーズ社(後にデリバルー社)に対して、ロンドン市内のカムデン地区の従事者を組織した労組Independent Workers Union of Great Britain (IWGB)が、労働組合としての承認を求めて2016年に中央仲裁委員会(注1)に行ったもの(注2)。中央仲裁委員会は、ルー・フーズ社と配達従事者の間の契約内容に着目、同社が審理開始に先立って行った改訂において、本人以外の代替要員による配達が認められていること、また大半の従事者は代替要員を使用していないとみられるものの、実際にもそうした実態があることが、使用者側の証人により示されたこと(注3)を重視した。加えて、業務をひとたび受けても、プラットフォーム側に連絡をすれば拒否が可能である(替わりの配送従事者はデリバルー側が手配する)こと、あるいは他の事業者からの業務を受けるために複数のアプリを並行して使用する従事者もいるとみられることなどを理由に挙げ、従事者は労働者ではなく自営業者であるとして、IWGBの承認申請を却下した。

IWGBはこの裁定を不服として、行政審査の申し立てを行ったが、高等法院は、原告側の複数の主張のうち、中央仲裁委の判断は欧州人権条約11条(労組を結成しそれに加入する自由)(注4)を十分考慮していない、という一点のみを控訴理由として認めて審理を行った上で、結果的には中央仲裁委の裁定を支持するとして申し立てを棄却(注5)、また控訴院も同様の判断を示した(注6)。このため、IWGBは最高裁判所に上告を行った。

しかし、最高裁判所もまた、中央仲裁委員会の裁定を支持するとの判決を下した(注7)。欧州人権条約11条における権利が発生するのは、雇用関係を背景とする場合のみであり、本件の労働の実施と報酬に関する事実に基づくならば、配達員はデリバルー社との間に雇用関係を有していない、というのが主な理由だ。中央仲裁委による検証は、①本人以外の代替要員によりサービスを提供した場合に罰則の適用等はないこと、②配達のオファーを応諾した比率や、オファーを受けられる状態を十分に維持していなかったことを理由に契約を終了していないこと、③同業他社のために働くことに反対しなかったことを確認しており、これらから、雇用関係は認められないとした判断は妥当であるとして、11条に基づく団体交渉権の保護を受けることはできないとしている。

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