長期失業者や就労困難者の就労支援策

カテゴリー:雇用・失業問題

イギリスの記事一覧

  • 国別労働トピック:2023年12月

政府は11月、失業者や低賃金労働者、就労困難者として社会保障給付を受給している層に対する就労支援策を公表した。長期失業者や低賃金層などに対する就労促進策を強化し、参加拒否等に対しては、給付の減額・停止などの制裁措置を適用する。一方で、就労困難者の就労促進策としては、給付受給の権利を保障しつつ試行的に就労することを認める。

非就労層への就労支援と制裁を強化

一連の施策は、財務省の秋期財政報告(注1)の一環として発表されたものだ。コロナ禍以降の経済再開以降、労働力不足の状況が続く一方で、中高年層を中心に非労働力人口が増加(注2)、健康上の理由により就労困難者として社会保障給付を受給する層も拡大しているとされ、政府はかねてから対策の必要性を主張していた。

今回示された施策の一つ、「就労復帰プラン」(Back to Work Plan)(注3)は、失業者や低賃金層など110万人の就労促進に向け、5年間で25億ポンドを投じるものだ。低所得層向け給付制度であるユニバーサル・クレジットを7週間受給している層に対して、ジョブセンタープラスでの追加的な支援を試行するほか、6カ月を経て失業状態にある受給者に、外部委託による12カ月間の個別支援(Restart)(注4)を提供する。これを経てなお失業状態にある受給者に対しては、さらなる求職活動や就労に向けた活動の見直しを実施、その内容を拒否する場合は給付を停止するとしており、これには義務的就業体験(mandatory work placement)(注5)の試行などが含まれる見込みだ。このほか、メンタル・ヘルスの問題から就業継続や求職活動の困難に直面している層に対する、各種の支援策(雇用とのマッチングや、就業継続のための支援、カウンセリング等)の拡充などを実施するとしている。

同時に、給付支給には厳格化が図られる。何らかの理由により、期限のない制裁措置を6カ月を超えて適用されている層について、低所得層向けの基礎的な給付や、これに付随する無料の処方箋や法的補助を打ち切るほか、同様に期限のない制裁措置を8週を超えて適用されている層についても、受給内容の見直しを行なうとしている。また、受給者の求職活動をより詳細に確認することを可能とし、将来的には雇用主をこの仕組みに組み込むことで、求職活動の監視を強化するとしている。さらに、不正受給対策に関連して、所管省庁である雇用年金省の権限を強化し、受給者に関して外部の組織が有する情報(銀行口座に関する情報等)へのアクセスを可能とするべく、法改正を行うとしている。

加えて、健康上の問題による長期の就労困難者を対象とした「就労機会保障」(Chance to Work Guarantee)(注6)の実施も予告されている。受給者が、給付受給の権利を維持したまま(参加により就労能力や受給資格に関する見直しの対象となることなく)就業を試す機会を提供し、また所定額まで給付の減額を受けずに賃金を受け取ることを認め、同時に、就労能力評価についても、在宅就業のような新しい働き方を踏まえて評価項目を見直すなど、2025年を目途に内容を刷新し、新規申請者に適用するとしている。

就労促進を図る社会保険料の料率引き下げ

一方で、経済的な利益を高めて就労を促すため、政府は国民保険料(注7)の被用者に対する料率を、来年1月より12%から10%に引き下げるとしている(注8)。年間の給与額が3万5400ポンドの平均的な労働者の場合、年450ポンド超の減税となると試算されている。また併せて、自営業者に対しても、週当たりの定額の徴収(年間の所得額が12,570ポンド以上の場合、週3.45ポンド)を廃止するとともに、所定額以上の所得に対する料率を9%から8%に引き下げる(注9)。年2万8200ポンドの所得水準の場合、年間で350ポンドが免除されるとしている。

参考レート

関連情報