ストライキ中の最低サービス水準の維持、法制化へ

カテゴリー:労働法・働くルール

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  • 国別労働トピック:2023年11月

公共部門等に対して、ストライキ中に最低水準のサービス維持を義務付ける法律の成立を受けて、旅客鉄道、救急、出入国管理の各サービス分野について、具体的な水準等の法制化に向けた動きが進んでいる。

鉄道は通常の4割、救急、出入国管理は通常時と同等のサービスを義務化か

7月に成立したストライキ(最低サービス水準)法(注1)は、ストライキ時に最低限のサービス維持を労使に義務付ける内容で、保健、消防・救助、教育、運輸、原子力施設の閉鎖と放射性廃棄物・使用済み燃料の管理、出入国管理の6分野を対象としている。使用者は、最低限のサービス水準の維持に要する労働者を選定して労組に通知を行うことができ、労組はこれに組合員が含まれる場合、その就業を確保するための合理的な手段を講じることが求められる。労組や指名された労働者がこれに反する場合、ストライキの実施に関連した法的保護の対象から除外されることとなり、労組についてはストライキによって雇用主に生じる損失の賠償義務(なお、賠償請求額の上限は、昨年25万ポンドから100万ポンドに引き上げられている(注2))、労働者についてはストライキへの参加を理由とする解雇等の可能性が生じる。

11月には、対象となる6分野のうち、先行して最低サービス水準に関するコンサルテーションを実施していた鉄道、救急の各サービスと、出入国管理について、所管省庁が相次いでコンサルテーションに対する政府の回答文書を公表、これと併せて、議会では法制化のための規則案が提出された。首相は、一連の規則案提出について、「労組が数百万の人々のクリスマスを台無しにするのを防ぐために、できることは全てする」と述べている。

このうち、政府が公約にも掲げてきた鉄道に関する最低サービス水準の維持をめぐっては、旅客関連に範囲を限定した規則案が提出された(注3)。旅客鉄道(注4)については、通常時(時刻表に基づいて運行されるサービス)の40%の維持を、また鉄道インフラ部門については、朝6時から夜10時までの時間帯における優先度の高い路線区間(付則で全国128区間を指定している)の運航維持を、事業者に義務付けている。

一方、救急サービスに関する規則案(注5)では、イングランドにおける(注6)公的医療サービスによる救急と非緊急の患者輸送のサービスを対象範囲として設定、救急通報への応答や、命の危機の状態にある人々への対応等について、ストライキがなかった場合と同等のサービスの実施を義務付けている。また、出入国管理の最低サービス水準に関する規則案(注7)では、税関における人・物の検査、空港・港等の警備、情報収集・普及や管理体制、旅券サービスについて、原則としてストライキがない場合と同等の機能を維持することとされる(注8)

参考資料

参考レート

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