労働裁判所、更に拡大が必要

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  • 国別労働トピック:2006年1月

現行の労働法は、労使対立が発生した場合、交渉による解決よりも、労働裁判所で訴訟により解決する方を選択させるような制度であることを、政府、労使ともに認めている。それゆえに労働法改正の必要性が、歴代の政権によって繰り返し提起され、改正が公約されてきた。しかし、労働法の改正は、政府、国会ともに多大の努力を強いられる反面、政治的見返りは少なく、或いは労使双方から反感を持たれる結果になりかねないために、歴代政権は改正に着手しないまま、単なる公約だけに終わり今日にいたっている。2003年1月1日に就任した労働党政権も、すでに任期半ばにして、労働法改正は次期政権によって行われるであろうと言い始めている。時代にそぐわない労働法と言われながら、政府、国会ともに、改正に向けた努力を避けている一方で、労働裁判所では訴訟件数が毎年増加しており、判決による解決は長期化している。

このような状況の下、労働裁判所は2006年度に裁判官と職員1万8859人の増員を求める法案を国会に提出した。次の表に見るようにブラジルの連邦司法制度が有する雇用人員10万8433人の中で、労働裁判所は4万8910人を有する最大の機構となっている。

2004年末の連邦司法制度の雇用人員と給与水準
  雇用総数 平均賃金
レアル
労働裁判所 48910 8374 418700
連邦裁判所 27185 7695 384750
選挙裁判所 19896 5376 268800
連邦直轄領裁判所 5912 8526 426300
最高控訴院 3631 7898 394900
軍事裁判所 1490 8521 42605
連邦最高裁判所 1409 8184 409200
司法全体の雇用 108433 7631 381550

出所・国家財務局、レアル通貨は2005年9月現在、1ドルは2.30レアル、円は1ドル115円で計算

連邦司法局は、2003~2004年にも、2万6177人を増員し、この他に9547人の非常勤コミショナーを増加させた。この増員により連邦政府は年間13億レアル(約5億6522万ドル)の追加支出を行っている。1995年から2002年までの8年間では9372人の職員と、2730人のコミショナーの増員であるから、2003年以降、つまり労働党政権就任後の増員は急激に増加している。司法は、行政や立法に比べて公務員数が少なく、3権の規模が不釣合いであるというのが彼らの主張であり、毎年人員拡大のための予算を国会に要求している。

労働裁判所は「司法制度の中で労働裁判所は年間判決件数で最大の件数であり、累積している訴訟を処理していく上で増員は不可欠」と、増員要求理由を説明している。2004年の労働最高裁の判決件数は218万件に上り、地方労裁24カ所も1990年から2004年にかけて合計判決件数は3倍に増加している。この増加に対応するために、2003年は新たに地方労働法廷269カ所の開設を国会に要請した。

財政再建に取り組んでいる政府は、立法、行政に比べて給料水準が非常に高い司法が、毎年大量の職員増員要求を国会に提出してくる事による歳出の拡大を憂慮している。

参考

  1. valor紙 2005年11月3日付
  2. 1米ドル=115.96円(※みずほ銀行ウェブサイトリンク先を新しいウィンドウでひらく2006年1月4日現在)

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