国民社会保障法案に対して労使ともに反発
全国民を対象として、健康保険、労災保険、年金などの保険に強制的に加入させる制度に関する法案が、1月15日に閣議によって決定され、2月上旬の時点で国会において審議された。この国民社会保障法案では毎年3兆ルピア(3億6000万ドル)を貧困層の健康保険にあてるとしている。この法案に対して、APINDO(インドネシア経営者協会)は反対の意を唱えた。
APINDOのソフジャン・ワナンディ担当委員長は反対する理由として、財政面でどのように負担をするつもりなのかが不明確であり、また、既存のJamsostekなどの社会保険制度との明確な区分けがなされていないため混乱をきたす可能性があるという点を挙げている。新しい制度をつくるよりも既存の制度を機能させることに力を注ぐべきではないかとしている。
同じくAPINDOの上級スタッフであるハルヤディ・スカムダニ氏によると、インドネシアにおいてフォーマル・セクターに属する被用者はわずかに2850万人(ちなみに、1999年時点の労働力は9900万人)である。インフォーマル・セクターの割合を一定程度に引き下げるようにならないことには国民皆保険は元も子もない。また、現行のJamsostekに基づいて社会保障関連経費として企業が負担しているのは、総コストの21%から27%にのぼる。この経費の全てが従業員の給与関連からまかなわれているわけではなく、企業によって運営されている社会保障プログラム基金によってまかなわれているのである。このことに加えて、ハルヤディ氏は既存の年金(Jamsostek)や健康保険(ASKES)などとの整合性をどのように取るのだろうかと疑問を呈している。
この声明が発表された後、2月中旬にはAPINDOと主要な労組(FSPSI(全インドネシア労働組合連盟)、FSBSI(インドネシア福祉労働組合連盟)、Gaspermindo Baru(新インドネシア労働組合連盟))との話合いがもたれ、労使ともに法案に反対の意思を表明した。
なお、過去、審議された国民健康保険法案については海外労働情報2003年6月と8月を参照、Jamsostekについては2002年9月、2001年2月を参照。
2004年5月 インドネシアの記事一覧
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