EU委員会、「労働時間指令」の見直しを提起

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  • 国別労働トピック:2004年4月

EU委員会は1月5日、1993年に採択され、週労働時間(時間外労働含む)の上限を48時間に定めた「労働時間の設定に関する指令」に関して、見直しを検討するための協議文書を発表した。労働時間の上限に関して、週48時間という数字自体は見直しの対象にはなっておらず、週平均労働時間を算定する対象となる期間(参照期間)を、現行の原則4カ月から見直すかどうかが検討される予定。また、実質的に英国のための特例規定として機能してきた「オプト・アウト」(労働者の同意を得た場合のみ週48時間の上限を超えて労働させることを認めている)について、今後の取り扱いを検討しどのような措置をとるかが課題とされている。このほか、医師の職場における待機時間を労働時間に含めるかどうか、および、「仕事と家庭生活の調和」を目的とした措置をどのように図るかが主な設定課題だ。

現行のいわゆる「労働時間指令」では、時間外労働を含めて週労働時間の上限を48時間と規定している(適切な休憩時間と最低4週間の有給休暇の付与が前提条件)。ただし、労働時間の算出にあたっては、企業の経済活動に対して労働時間を柔軟に運用することを目的として、加盟国は「4カ月を超えない参照時間」を設定して週当たりの労働時間の平均を出し、それが48時間を下回っていればよい(警備・監視労働、労働者の自宅と就業場所が遠い場合などは「6カ月以下の期間」に延長される)。このほか労働協約により、産業レベルで設定可能な参照期間を1年以内としている。

EU委員会が示した課題のうち、「オプト・アウト」を全面的に認めている英国に関しては、加盟国中労働時間が最も長い事実が示されている。EU加盟国の平均が40時間をわずかに超える程度で、加盟国の半数以上が40時間を下回っているのに対し、英国は43時間を超え突出している。週48時間以上働く労働者の割合は16%で、そのうち46%は管理職的な地位にあり指令の対象外となるため、実際にオプト・アウトを必要とする労働者の数は限られている。しかし、使用者側のあるアンケート調査では、759社中65%の企業が、自社の従業員(一部または全部)にオプト・アウトに同意するよう求めているほか、CBI(イギリス産業連盟)の調査では、英国の労働者の33%が同意書にサインしている。EU委員会はこのような「労働者の同意」が「一般化」していて、「事実上労働者の選択の自由を制限している」と指摘した。

このほか、欧州司法裁判所が昨年10月に出した、医師が実際には職務に従事せず職場で待機している時間を「労働時間に該当する」と認めた判決に対し、対応を検討することも課題のポイントだ。この判決が出るまで、ほとんどの加盟国では、待機(オン・コール)のための時間は労働時間に含まれない扱いが一般的だった。EU委員会は待機時間の労働時間参入によるコスト増を試算し、オランダで4億ユーロ、ドイツでは17億5000万ユーロにも及ぶとしている。

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